円形脱毛症とは?
円形脱毛症は、自己免疫が原因で毛包(毛根の部分)が攻撃され、円形や楕円形の脱毛斑(ハゲ)ができる病気です。軽症では、脱毛斑が少数で小さく、自然治癒する場合もありますが、重症になると全頭型や汎発型(全身の体毛が抜ける)になることもあります。原因とリスクは?
1.遺伝的要因
家族内発症のリスクがあり、一卵性双生児での一致率高いことがわかっています。またアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と合併することがあります。
2.環境要因
ストレス、感染症、ワクチン接種、出産、疲労などが発症や悪化の引き金になりますが、全く当てはまらなくても発症する方も多くいます。
3.新型コロナウイルス
COVID-19やワクチン接種が円形脱毛症を誘発する例も報告されていますがはっきりした頻度はわかっていません。
検査と診断
■専門医による診察
脱毛斑の形状や部位、爪の変形(点状陥凹)などを観察します。脱毛をきたす疾患は複数あるため、鑑別のために脱毛斑の数や範囲、皮膚の炎症を確認します。またその他の合併する疾患がないかどうかも確認します。
■トリコスコピー
毛根や毛幹の状態を詳しく観察するために、特殊な拡大鏡を使って診断します。
■血液検査
自己免疫疾患や甲状腺疾患、鉄欠乏などの合併症を確認するために行うことがあります。
治療法は?
■ステロイド局所注射(推奨度1)
効果が高く、軽度から中等度の症例で第一選択とされますが、局所的な副作用(皮膚萎縮)が起こることがあります。最も推奨される治療法の一つです。
■ステロイド外用薬(推奨度1)
脱毛のもとになる自己免疫性の炎症を抑える作用があります。毛穴の炎症などを起こすことがあります。最も推奨される治療法の一つです。
■JAK阻害剤内服(推奨度1)
免疫反応を抑制する新しい薬で、重症例に特に有効とされます。免疫反応を抑制するため感染症のリスクがあり、また、心臓疾患がある人、60歳以上の人、肥満の人では特に慎重な管理が必要です。投与前や投与中に血液検査や画像検査などで副作用のチェックが必要です。最も推奨される治療法の一つです。当院では基幹病院で導入後のフォローアップを行っています。
■かつらの使用(推奨度1)
広範囲の脱毛では見た目が大きく変化し、精神的なストレスに繋がります。日常生活でのストレスを緩和するのに医療用のかつらの使用は最も推奨される対処法の一つです。
■光線治療(推奨度2)
医療用の特殊な紫外線を利用して免疫反応を抑える治療法です。PUVA療法(紫外線感受性を高める薬剤をを併用して紫外線A波を照射)は最近はあまり行われません。エキシマライトは308nmの単一波長を使い、narrow-band UVB療法は311-313nmの紫外線B波を使います。10年単位で長期に照射した場合の光老化のリスクが軽度ありますが、有効な治療法です。当院では局所タイプのエキシマライトと全身型のnarrow-band UVB照射器を使用しています。詳しくはコチラを御覧ください。
■ステロイド内服(推奨度2)
効果はありますが、長期使用による全身性の副作用(糖尿病、骨粗しょう症など)のリスクがあります。短期間の使用に留めるのが望ましい薬です。
■局所免疫療法(推奨度2)
ある種のかぶれやすい化学物質でわざと脱毛部をかぶれさせる治療法です。化学物質に反応する免疫細胞が免疫のバランスを変えることで自己免疫反応が抑えられると考えられています。保険適用になっていないのと、全身が痒くなる自家感作性皮膚炎のリスクなどがあります。当院では大学病院などの基幹病院で導入後のフォローアップを行っています。
■その他の治療法(推奨度2~3)
抗ヒスタミン薬、セファランチン内服、グリチルリチン製剤、ミノキシジル外用、冷却療法、催眠療法など様々な治療法があるので症状に合わせて主治医と相談しましょう。
参考外部サイト
参考になる外部サイトを紹介します。■NHKのきょうの健康
https://www.nhk.jp/p/kyonokenko/ts/83KL2X1J32/episode/te/X8XGZRP5W6/#article
■スヴェンソン円形脱毛症.com
https://www.enkei-datsumou.com/
よくある質問
Q:円形脱毛症は自然に治ることがありますか?
A:軽度の場合、数ヶ月以内に自然回復しますが、再発することも多くあります。重症例では経過が長くなりやすいため継続的な治療が必要です。場合によっては入院して点滴治療を行うこともあります。最重症の場合はJAK阻害剤などの治療を検討します。Q:ストレスが原因ですか?
A:ストレスは円形脱毛症の引き金の一つですが、遺伝的要因や免疫系の異常も大きな要因です。Q:治療にどれくらいの時間がかかりますか?
A:個人差がありますが、軽度の場合は数ヶ月で効果が現れることがあります。重症の場合、1年以上の治療が必要なこともあります。
Q:ステロイドの副作用が心配です。
A:ステロイドの外用剤の副作用は毛穴の炎症が起こる程度で使用を休めばすぐにおさまりますので問題ありません。点滴は内服はあまり行われませんが、行われるときには慎重に行われ、必要最小限の量で治療します。副作用については医師と十分に相談してください。
Q:光線療法は痛みを伴いますか?
A:光線療法は痛みを伴うことはほとんどありませんが、光に過敏性がある方では皮膚が赤くなったり、軽いかゆみが出る場合があります。副作用が少なく効果が高いため、当院では最新のエキシマライトを使って積極的に治療しています。
Q:JAK阻害薬はどのような人に適していますか?
A:JAK阻害薬は広範囲の脱毛や難治性のケースに適していますが、感染症や血栓症のリスクがあるため、特に重度な症例のみ使用されます。当院では大学病院などの基幹病院できちんと検査して薬剤を導入された方のフォローアップを行います。
Q:円形脱毛症は他人にうつりますか?
A:円形脱毛症は自己免疫疾患であり、他人にうつることはありません。ただし遺伝的に発症しやすい体質はあります。
Q:脱毛斑が頭以外にも広がることがありますか?
A:円形脱毛症の症状は眉毛、まつ毛、ヒゲ、体毛などどの部位でも起こり得ます。どこまで拡大するかを事前に知る方法はないので症状が出現した場所になるべく早く治療を開始します。重症の場合には入院・点滴治療を行うこともあります。