アトピー性皮膚炎とは?
アトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能が弱くなることで、外部の刺激やアレルゲンが皮膚に侵入しやすく、これが炎症やかゆみを引き起こす疾患です。湿疹は顔、首、肘や膝の内側などに多く見られ、掻くことでさらに症状が悪化することがあります。小児期に発症しやすいですが、成人期にも続く場合があります。成人では仕事やストレスなどが悪化因子となり、症状がより重症化することがあります。2020年代以降、次々と画期的な新薬が使用できるようになっており、アトピー性皮膚炎の治療も大きく変化しています。ここでは、アトピー性皮膚炎の概要、予防法、症状の原因、治療法、検査方法、アレルギーとの関係を説明します。
予防のスキンケアは?
アトピー性皮膚炎の予防には、適切なスキンケアが欠かせません。保湿剤をこまめに使用することで、皮膚のバリア機能を強化し、乾燥や刺激から守ります。特に入浴後や顔を洗った直後に保湿剤を塗ることが推奨されます。日常生活では、汗をかいたらすぐに拭き取る、綿素材の衣類を選ぶ、バランスの良い食事、規則正しい生活習慣を心がけることが重要です。
大人のアトピー性皮膚炎と環境アレルギー
大人のアトピー性皮膚炎は、アレルギー体質が強く関与します。特に花粉症や喘息などのアレルギー疾患を併発しやすく、生活環境の変化やストレスが症状に大きく影響します。特にダニやハウスダストに対するアレルギー抗体が陽性なことも多く、症状に応じてアレルギー検査を行います。
小児のアトピー性皮膚炎と食物アレルギー
特に離乳食期の小児では、食物アレルギーがアトピー性皮膚炎を悪化または発症の原因になることがあります。卵、牛乳、小麦、大豆などが代表的なアレルゲンです。医師の指導のもとで、食事制限や食物負荷試験を行い、症状をコントロールすることが求められます。当院では指先からの採血で多数の環境・食物アレルゲンを検査できます。必要に応じて生後間もなくの赤ちゃんから大人まで検査が可能です。アレルギーの検査
■血液検査IgE抗体のレベルや特異的アレルゲンに対する反応を調べます。TARCという炎症の程度を測る項目を調べることもあります。特に大人ではアレルゲンのセットではなく、症状に応じて必要なアレルゲンをチェックできる血液検査がおすすめです。
■パッチテスト
特に顔面頸部にしつこく湿疹症状が出る場合にはヘアケア製品や化粧品などのかぶれをチェックするためにアレルゲンを皮膚に貼る検査を行うことがあります。金属アレルギーの検査もパッチテストで行います。パッチテストは症状に応じて検査するかどうかを医師が確認してから行うので、受診してからでなければできません。
アトピー性皮膚炎の治療
アトピー性皮膚炎の治療は、症状の重症度に応じて、外用薬、内服薬、注射、光線療法が組み合わされます。2020年代以降様々な新薬が登場し、アトピー性皮膚炎の治療は格段に進歩しています。
治療法1)塗り薬の治療
■ステロイド外用剤ステロイド外用剤は生後すぐから利用できます。様々な組織や細胞に一斉に強く働きかけて強力に炎症を抑えます。ケンカを無理やりやめさせる親分のようなイメージです。しかし適切な使用をしなければ皮膚が薄くなったり、毛が濃くなったり、毛穴の炎症や赤みなどの副作用が起こりますので、ステロイド外用剤以外の外用剤をうまくつかって使用量を減らしていきます。
■ステロイド以外の抗炎症剤
・タクロリムス軟膏
2歳以上で使用できます。免疫の働きを調整する成分の働きを調整して炎症を抑えます。イライラしてケンカを繰り返す人をなだめるようなイメージです。塗ると刺激があることがあるのでステロイド外用剤で炎症を抑えてから使います。
・コレクチム軟膏
生後6ヶ月以上で使用できます。細胞の中で情報を伝達している物質の一部を効果的にブロックすることで炎症を抑えます。怒りっぽい人にイライラさせるような話が伝わりにくくなるイメージです。炎症を抑える効果は弱いのでステロイド外用剤で炎症を抑えてから使います。更に詳しくはコチラの外部サイトを参照してください。
・モイゼルト軟膏
生後3ヶ月以上で使用できます。PDE4という炎症に関係した成分が過剰に働くのを抑えて炎症を抑えます。ケンカを煽る人を追い払ってケンカをなだめるようなイメージです。炎症を抑える効果は弱いのでステロイド外用剤で炎症を抑えてから使います。
・ブイタマークリーム
12歳以上で使用できます。タピナロフという成分が細胞の中で炎症を抑える物質を活性化して炎症を抑えます。怒っている人の心の中に冷静さを芽生えさせるイメージです。7人に一人程度、頭痛が数日間出ることがあります。更に詳しくはコチラの外部サイトを参照してください。
治療法2)全身療法(内服・注射)
全身療法は、外用薬だけでは不十分な場合や、全身に及ぶ強い症状に対して使用されます。2020年代に入って次々と画期的な薬が登場しています。
■抗ヒスタミン剤(内服)かゆみを軽減するために使われます。特に夜間のかゆみに効果的で、睡眠の質を改善する役割もあります。アレルギー性の炎症を起こしづらくする作用もあります。
■シクロスポリン(内服)
シクロスポリンという成分で強い炎症を抑えるために使用され、重症のアトピー性皮膚炎に対して効果的です。かゆみを抑えるのに高い効果があります。しかし、長期間使用すると腎臓への負担や血圧上昇が懸念されるため、医師の監視下での使用が必要です。
■JAK阻害剤(内服)
JAK阻害剤は、炎症を引き起こす物質の働きを阻害し、かゆみや湿疹を軽減します。JAK阻害剤の内服薬は、皮膚の炎症を全身的に抑制するため、効果が強力です。特に、外用薬や他の内服薬が効果を示さない場合に使用され、速やかな効果が期待されます。ただし、感染症のリスクがあるため、使用には慎重な管理が必要です。またステロイド外用剤などの標準治療を一定期間しても効果がない場合のみ使用できます。オルミエント・サイバインコ・リンヴォックなどがあります。リンヴォックについてはコチラの外部サイトを参照してください。
■生物学的製剤(注射)
生物学的製剤は、免疫システムの特定の部分を標的として、炎症を引き起こす物質の働きを抑えます。これにより、かゆみや皮膚の赤みを効果的に軽減します。生物学的製剤は、効果が持続的で、長期的なコントロールに向いています。またシクロスポリンやJAK阻害剤に比べると全身に与える影響が少ないのでより安全に使用できます。ステロイド外用剤などの標準治療を一定期間行っても効果がない場合のみ使用できます。
・デュピクセント
生後6ヶ月以上の方で使えます。2ヶ月目以降は家で自己注射が可能です。詳しくはコチラの外部サイトを参照してください。
・ミチーガ
13歳以上で使用できます。2ヶ月目からは家で自己注射が可能です。詳しくはコチラの外部サイトを参照してください。
・イブグリース
12歳以上で体重40kg以上で使用できます。2~4週間に一度、通院して注射が必要です。詳しくはコチラの外部サイトを参照してください。
・アドトラーザ
成人で使用できます。2週間に一度、通院して注射が必要です。詳しくはコチラの外部サイトを参照してください。
治療法3)光線療法
光線療法(紫外線療法)は、中等症から重症のアトピー性皮膚炎に対して効果的な治療法です。皮膚に有害な波長をカットして皮膚炎に効果がある波長だけを照射できるナローバンドUVB・エキシマなどの優れた治療器具が登場しています。光線療法は全身療法がしづらい妊婦・授乳婦の方の治療や、ステロイド外用剤の使用量を減らすのに効果的です。無計画な長期間の使用には皮膚がんのリスクがあるため、医師の管理のもとで行われます。
当院では治療効率が高い全身型ナローバンドUVB照射器と、局所型エキシマランプを使用しています。詳しくはコチラを御覧ください。
治療法4)保湿剤
保湿は、アトピー性皮膚炎の予防と治療の基本です。皮膚のバリアを強化し、乾燥や外部刺激から守ります。特に乳幼児時期にバリア機能が下がっているとアトピー性皮膚炎を発症しやすくなりますので、生後すぐからのスキンケアが重要です。
参考になる外部サイト
下記の外部サイトはアトピー性皮膚炎に関する情報がまとまっています。参考にしてください。
■アトピー性皮膚炎全般についてhttp://www.maruho.co.jp/kanja/atopic/
■乳幼児の食物アレルギーについて
http://www.meiji-hohoemi.com/baby/allergy/index.html
http://www.hagukumi.ne.jp/caremamapapa/babyfoodallergy/01.shtml