そろそろ今年もスギ花粉症シーズンに入りました。
「まぁひどい時だけ薬で抑えればなんとかなるか!」
「あまり症状がないのに薬にたよらずに免疫力を高めよう!」
こんなふうに考えているとしたらちょっとリスクありです。
花粉症で最も重要なのは「症状が起こる前から戦いは始まっている」ということです。
今回は、花粉症が起こる仕組みから、なぜ症状が悪化するのか、そして何より大切な「初期療法」についてお話しします。
放置するほど酷くなる?
花粉症は、スギやヒノキの花粉が鼻や目の粘膜に触れることで起きるアレルギー反応です。
日本からスギ花粉がなくなることはありませんので、来年も必ずスギ花粉は飛びます。
あなたの花粉症、毎年ひどくなってませんか?
それには理由があるんです。
鼻の粘膜は「高性能センサー」
鼻の粘膜は、外から入ってくる空気の中の異物を感知する「センサー」の役割を持っています。
花粉が飛び始めたばかりの頃、このセンサーはまだ落ち着いた状態にあります。
ところが症状が出ても放置していると、粘膜の中で「マスト細胞」という免疫細胞がヒスタミンをはじめとする炎症物質を大量に放出します。
これが鼻水・くしゃみ・鼻詰まりの原因です。
問題は、この炎症物質が粘膜そのものを変化させてしまうことです。
炎症が続くと粘膜の神経が過敏になり、センサーの感度がどんどん上がっていきます。
最初はたくさんの花粉が来ないと反応しなかったのに、炎症が進むと、ほんの少しの花粉でも激しく反応するようになるのです。
これを「鼻過敏症」あるいは「最小持続性炎症」と呼び、ガイドラインでも花粉症悪化の重要なメカニズムとして認識されています。
炎症は「燃え始めると勝手に拡大する」
炎症というのは、将棋の駒が倒れていくように、一度連鎖が始まると自分でどんどん広がっていく性質があります。
具体的には下の図のようなイメージです。
この連鎖が一度回り始めると、もはや花粉という外からの刺激がなくても、粘膜自体がどんどん炎症を起こしやすい状態になっていきます。
これが「今年は症状が特にひどい」「薬を飲んでいるのに効かない」という状態の正体です。
花粉の量が多いからではなく、粘膜そのものが「鼻炎になりやすい状態」に変化してしまっているのです。
鼻詰まり→睡眠不足→免疫低下へ
炎症が進んだ粘膜は腫れて鼻が詰まります。
夜、鼻が詰まると口呼吸になり、睡眠の質が大きく低下します。
深い眠りが取れないと、免疫システムのバランスが乱れ、アレルギーを促進するTh2系の免疫反応が優位になりやすくなります。
これがさらに花粉症を悪化させるのです。
「春になると毎年疲れやすい」と感じている方は、この睡眠の質低下が影響しているかもしれません。
だから「初期治療が大切」
ここまでの話を一言で言えば、「花粉症は症状が出したら負け」ということです。
症状が本格化する前に治療を始めて、悪循環サイクルを回さないこと。
これは鼻アレルギー診療ガイドラインでも強く推奨されています。
「症状が出ていないのに薬を飲むのはなんだか抵抗がある」
—そう感じる方は多いと思います。余計な薬は飲みたくないですよね。
でも、先ほどの「将棋倒し」の仕組みを思い出してください。
一度連鎖が始まってから止めようとしても、すでに倒れた駒は元に戻りません。
炎症が始まってから薬を使っても、過敏になってしまった粘膜を元の状態に戻すには、何倍もの時間と薬の量が必要になります。
かえってたくさんの薬を使わないといけないなら、薬を減らすという目的と真逆ですよね。
薬の量が少なくて済めば、眠気や口の渇きなど、鼻炎の薬の副作用のリスクも下がります。
だからこそ「症状が出る前から治療を行う」のが大切なのです。
今年はいつから治療するべき?
2026年の岡山県では、スギ花粉の飛散は2月上旬から中旬にかけてすでに始まっています。
「目がちょっとかゆいかな?」「朝だけくしゃみが出るかな?」と感じ始めたら、それが始めどきです。
当院でも先週から症状を感じて受診される方が増えてきています。
少ない薬で快適に今シーズンを乗り切るために、早めの受診をおすすめします。
日本皮膚科学会皮膚科専門医 服部浩明