光治療と美肌のしくみ(2)|服部皮膚科アレルギー科|岡山市北区清心町の皮膚科・アレルギー科・美容皮膚科 光治療と美肌のしくみ(2)|服部皮膚科アレルギー科|岡山市北区清心町の皮膚科・アレルギー科・美容皮膚科

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光治療と美肌のしくみ(2)

はじめに:前回のおさらい

 

前回のブログでは、「光」が私たちの目に見える色だけでなく、赤外線や紫外線と同じ電磁波というエネルギーの一種であり、その波長(波の長さ)によって性質がまったく異なることをお伝えしました。

 

たとえば、水が温度によって氷・水・蒸気と姿を変えるように、光も波長によって反応する対象や作用の仕方が変わるのです。

 

特に、メラニン(黒い色素)やヘモグロビン(赤い色素)には、特定の波長の光が強く吸収されるという性質があります。IPLはこの特徴を利用し、シミや赤みの治療に応用されています。

 

第1章:色に反応する“光の波長”のちがいとは?

 

光の波長は「ナノメートル(nm)」という非常に小さな単位で表されます(1ナノメートルは100万分の1ミリメートル)。IPL治療に使われる光は、おおよそ500〜1000nmの範囲です。

 

この波長の範囲は、それぞれ異なる皮膚の構造や色素に反応します。

 

500〜600nm前後の波長は、肌の表層にあるメラニン(黒い色素)やヘモグロビン(血の赤い色素)に吸収されやすく、シミや赤みの治療に適しています。

 

600〜900nm前後の波長は、やや深い部分の血管や毛細血管への到達性が高く、血管病変の改善に使われます。

 

900〜1000nm近い波長になると、水分に吸収されやすくなり、肌の奥にあるコラーゲン繊維などへのアプローチが可能です。

 

このように、波長の選び方次第で、治療のターゲットや深さが変えられるのが、IPLの魅力のひとつです。

 

第2章:IPLの光は「フィルター」で目的に合わせて調整されている

 

IPLの光は、レーザーと異なり、特定の波長だけでなくある程度幅のある“拡がった波長”を持つ光です。そのまま照射すると、効果が分散してしまったり、余計な波長が肌に負担をかけてしまう可能性があります。

 

そこで重要なのが、専用のカットフィルターの存在です。

 

IPL機器にはこのフィルターが組み込まれており、照射の目的に応じて不要な波長を取り除き、メラニンやヘモグロビンなど、目的の色素に反応する波長だけを選んで肌に届けることができます。

 

たとえば、

  • シミやくすみには、メラニンに吸収されやすい波長(500〜600nm)を中心に。
  • 赤みに対しては、ヘモグロビンに反応する波長(550〜650nm)を中心に。
 

このように、目的別に波長をコントロールできるため、より安全に、より効果的な治療が可能になります。

 

第3章:光が色素に吸収されると“熱”が生まれる

 

フィルターで選ばれた光が肌に当たると、そのエネルギーは特定の色素に吸収されます。そして、吸収された光エネルギーは熱に変換され、局所的に温度が上昇します。

 

この熱作用によって、

  • メラニンは分解されて、ターンオーバー(皮膚の生まれ変わり)とともに少しずつ排出されます。
  • ヘモグロビンを含む毛細血管は熱ダメージを受けて閉塞し、数週間〜数ヶ月かけて自然に消えていきます。
 

つまり、IPLは色素そのものにのみエネルギーを届け、皮膚の表面を傷つけずに、内側から肌質や色ムラを整えることができるのです。

 

第4章:IPLとは「一瞬で強い光を届ける技術」

 

IPLの「Pulsed(パルス)」という言葉が示すように、この治療法では非常に短い時間に、高出力の光を一気に照射します。

 

この一瞬の強い光を使うことで、皮膚の中にあるターゲット色素に効率よくエネルギーを届けることができ、必要な熱をピンポイントで生じさせることが可能になります。

 

また、レーザーのように一点集中型ではなく、IPLは広がりのある面照射をするため、広い範囲に均一なエネルギーを与えることができ、治療時間も比較的短く、ダウンタイムも少なくすみます。

 

第5章:なぜ“短時間に強いエネルギー”が効果を生むのか?

 

ここで、「なぜIPLは一瞬で強いエネルギーを照射する必要があるのか?」という点について、もう少し踏み込んで解説します。

 

皮膚の中にあるメラニンやヘモグロビンといった色素は、ある一定以上の熱エネルギー(閾値)を超えた時にのみ、変性や破壊が起こるという特性を持っています。
つまり、弱いエネルギーをゆっくり当てても効果が出ず、一瞬で閾値を超えるパワーを与えることが必要なのです。

 

たとえば、薄い板を100回軽く叩いても割れませんが、100回分の力を1回で集中して与えれば、パキッと割れるのと同じです。

 

IPLはこの「一撃の力」をパルス光(瞬間的な強い光)として実現しています。
しかも、それを色素だけに選んで届けられるため、必要な箇所にだけダメージを与え、周囲の正常な組織は守ることができるのです。

 

この、「色素にだけ・一瞬で・しっかりエネルギーを与える」という仕組みこそが、IPLの治療効果の本質です。

 

まとめ:IPLは「狙って選ぶ光」と「瞬間的な集中パワー」の組み合わせ

 

IPLがシミや赤みに効くのは、以下の2つの要素が組み合わさっているからです。

 
  • 専用のフィルターで、目的の色素にだけ反応する光(波長)を選び、不要な波長をカットすることで、安全に効率よくエネルギーを届けること。
  • その光を一瞬で強く照射することで、熱を発生させ、色素を壊し、肌の内側からシミや赤みを減らしていくこと。
 

この2つの技術によって、IPLは美肌・シミ・赤み・ハリ改善など、複数の目的に対応できる光治療として高く評価されているのです。当院で使用しているIPL(ノーリス)についてはコチラをご覧ください

 

(日本皮膚科学会認定皮膚科専門医 服部浩明)