
はじめに:前回のおさらい
前回のブログではなぜIPL=光治療器が皮膚の美容に効果があるのかについてお話しました。ポイントは、
- シミや赤みに吸収されやすい波長の光を選択的に照射する
- 一瞬で強いエネルギーで照射する
という二つのポイントでした。
さて、今回はいよいよ「なぜノーリスが次世代型光治療器」と呼ばれているかについてお話します。
950nmより長い光は、なぜ危険なの?
光は波のように流れるエネルギーです。そして波の長さ(=波長)によって、反応する相手が変わります。
たとえば…
- メラニン(シミの元)やヘモグロビン(赤みの元)は、500〜600nmくらいの光に反応します。
- 一方、950nmより長い光は、色素ではなく“水分”に強く吸収される性質があります。
人の皮膚は約6〜7割が水分。そのため、950nmを超える光を当てると、色素ではなく肌の水分が吸収してしまい、皮膚そのものが余計に熱を持ってしまうのです。
その結果…
- やけどやヒリヒリ感のリスクが上がる
- 本来狙いたい色素にはあまり効かない
という、IPLの理論から外れた状態になってしまいます。
イメージとしては、「ストーブで部屋をあたためたいのに、なぜか壁ばかり加熱されて焦げそうになる」ようなものです。

ノーリスが搭載している“水のフィルター”とは?
ノーリスは、この問題を根本から解決しました。
その秘密は、「水を通して光をフィルターにかける仕組み」にあります。この水のフィルターは、950nm以上の長い波長の光をあらかじめ吸収して遮断してくれます。つまり、
- 色素に効く光(500〜950nm)だけを肌に届ける
- 余計な波長(肌を焦がすだけの光)は最初から通さない
このように、ノーリスは「IPLの良いところだけを抽出したような照射」を可能にしているのです。
たとえるなら、水道水の中から不純物だけをフィルターで取り除いて、きれいな水だけをコップに注ぐようなイメージです。
冷却がいらないことで、治療効率がアップ
従来のIPLでは、950nm以上の波長が混ざっていたため、
- 肌が過剰に熱くならないように
- やけどを防ぐために
照射面を冷やしながら治療する必要がありました。
ところがこの“冷却”というのが、意外にも治療の邪魔をしてしまいます。
冷やすと…
- 光であたためたはずの色素も一緒に冷えてしまい、効果が弱まる
- 血管が一時的に縮むので、赤みの原因であるヘモグロビンが減り、光に反応しづらくなる
つまり、「冷却」は安全のためには必要だったけれど、治療効率を下げる原因にもなっていたのです。
ノーリスは、最初から余分な熱を生む波長をカットしているので、
- 冷却が不要
- 色素にしっかり熱が伝わる
- 赤みに対しても光がよく反応する
という、まさに“理論どおり”のIPL治療が可能になります。
弱いパワーでも効く、だから安全
ノーリスのもうひとつの魅力は、強いパワーを使わなくても、しっかり効果が出るところです。
従来のIPLでは、冷却によって熱が逃げてしまう分、それを補うために出力を上げざるを得ませんでした。でもそれが、
- 肌の赤みやヒリつき
- やけどのリスク
を高めてしまう原因になっていたのです。
ノーリスは、
- 必要な波長だけを取り出して
- その光を無駄なくターゲットに当てる
ことができるので、低い出力でもしっかり効果が出ます。
肌への負担が少なく、リスクを最小限に抑えながら治療できる。これが「次世代IPL」と呼ばれる大きな理由のひとつです。
シミと赤みで異なる波長
ノーリスは、シミと赤みにそれぞれ特化した専用のフィルターを使い分けることができます。たとえば…
- VL555フィルター:加齢によるシミや色素沈着など、シミの原因=メラニンや、赤ら顔などの赤みなどより幅広い効果を持つ波長
- PR530フィルター:シミの元=メラニンや、赤ら顔や細かい血管の赤み=ヘモグロビンにより強く反応する「シミ・赤み特化型」の波長
こうした“波長のチューニング”ができるおかげで、シミ・赤みなど「色」の病変だけでなく、皮膚全体のアンチエイジングも守備範囲に入れた多角的な治療法が選択できるのがノーリスの強みです。
まとめ:ノーリスが“次世代”といわれる理由
- 950nmより長い波長を水のフィルターでカットし、肌への無駄な熱を防ぐ
- 冷却が不要なので、色素や血管にしっかり熱が届き、理論どおりの反応が得られる
- 低い出力でも効果が高く、安全性もアップ
- フィルターでターゲットを細かく調整できるから、シミも赤みだけでなく、アンチエイジングにも対応
ノーリスは、これまでのIPLの弱点をカバーしながら、その強みを最大限に引き出した光治療器です。それが「第2世代IPL」という評価につながっています。
当院でもノーリスを使って多くの患者さんに施術を行っています。初回の画像診断を毎回の施術前に皮膚科専門医が確認して安全性を高めて、より高い効果を得る工夫をしています。
当院でのノーリス治療については詳しくはこちらをご覧ください。
(日本皮膚科学会皮膚科専門医 服部浩明)