12月に入り、朝晩の冷え込みが本格的になってきました。
この時期、皮膚科の診察室では「肌の乾燥」に関する相談が増える一方で、「そろそろシミを取りたい」「赤みを改善したい」というご相談も増えてきます。
実は、冬は光治療やレーザー治療を始める最適な季節です。
「シミ取りは夏が終わってから」「レーザーは紫外線の少ない時期に」──こうした話を聞いたことがある方も多いでしょう。
では、なぜ冬なのでしょうか。単なる経験則ではなく、明確な医学的根拠があります。
今回は、冬が光・レーザー治療に適している理由を、紫外線量のデータとともに解説し、当院で行っている3つの治療法をご紹介します。
冬が光・レーザー治療に適している医学的理由
1)紫外線量は夏の約5分の1に減少
気象庁のデータによると、東京における7月のUV-B紫外線量は約7.3kJ/m²であるのに対し、12月は約1.7kJ/m²と、夏のピーク時の約4.3分の1にまで減少します。
また、紫外線の強さを示すUVインデックスで見ても、7月の正午が「非常に強い」を示す10.2程度であるのに対し、12月は「弱い」カテゴリーの1.7〜2.2程度です。
2)レーザー治療後の炎症後色素沈着のリスク
レーザーや光治療を受けた肌は、一時的に軽い火傷のような状態となり、バリア機能が低下します。
この状態で紫外線を浴びると、メラノサイト(色素細胞)が活性化され、メラニン色素が過剰に生成されます。
これが「炎症後色素沈着(PIH)」、いわゆる「戻りジミ」と呼ばれる状態です。
通常、この色素沈着は肌のターンオーバーとともに3ヶ月から1年程度で自然に消失しますが、紫外線対策を怠ると消えにくくなったり、元のシミより濃くなったりすることがあります。
冬であれば紫外線量が少ないため、こうしたリスクを大幅に減らすことができます。
3)長袖・長ズボンによる物理的遮光
冬は衣服で肌を覆う機会が多く、治療部位を物理的に紫外線から保護しやすいという利点もあります。
特に、手や腕のシミ取りを希望される方にとって、長袖で患部を守れる冬は治療に適した季節です。
4)ダウンタイムへの配慮
レーザー治療後は、一時的に赤みやかさぶたができることがあります。
年末年始を除けば、冬は比較的外出や人と会う機会が少ないため、ダウンタイムを気にせず治療を受けやすい時期でもあります。
当院で行っている3つの光・レーザー治療
当院では、患者さんお一人おひとりの肌状態や悩みに合わせて、適切な治療法をご提案しています。
1)ノーリス(次世代型IPL)──複合的な肌トラブルに対応
ノーリスは、デンマークのエリプス社が開発した光治療器です。
従来のIPLの欠点を改善した「第2世代IPL」とも呼ばれています。
① 技術的特徴:
- • 950nm以上の波長を水フィルターでカットすることで、肌への不要な熱を防ぎ、やけどのリスクを低減
- • 冷却装置が不要なため、メラニン色素や血管に効率よくエネルギーが届く
- • 広い波長帯域により、シミ、赤み、毛穴、肌質など複合的な改善が期待できる
② 適応となる症状:
- • 境界が不明瞭なシミやくすみ
- • 赤ら顔や毛細血管拡張
- • 毛穴の開き
- • 全体的な肌質の改善
③ ダウンタイム: ほとんどの方が翌日からメイクが可能です。ただし、高い効果を求めて強く照射すると赤みが長引くことがあります。
④ 治療回数: 通常3〜5回の施術で効果が現れます。当院では3回を1クールとし、継続するほど費用が割安になる設定にしています。
⑤ 費用:
- • 全顔1回:22,000円
- • 全顔3回セット(1〜3回目):59,400円
ノーリスについては
こちらのブログ記事や、
こちらのホームページ本文でも詳しく取り上げています。
2)Qスイッチルビーレーザー──境界明瞭なシミの除去
Qスイッチルビーレーザーは、シミ取り治療のゴールドスタンダードとして、長年の実績を持つ治療法です。
① 技術的特徴:
- • 694nmの波長がメラニン色素に最も特異的に反応
- • 周囲の正常な皮膚組織へのダメージを最小限に抑制
- • ほとんどのシミは1回の治療で除去可能
② 適応となる症状:
- • 境界が明瞭な茶色いシミ(老人性色素斑)
- • そばかす
- • ピンポイントで除去したいシミ
③ ダウンタイム: 照射後、患部に黒っぽいかさぶたができ、通常1〜2週間で自然に剥がれます。その間は茶色いテープで保護するか、コンシーラーでカバーします。
かさぶたが剥がれた後はピンク色の新しい皮膚が現れます。この時期が最も紫外線の影響を受けやすいため、徹底した遮光が必要です。冬であれば、この期間も紫外線量が少ないため、色素沈着のリスクを抑えられます。
④ 費用:
- • 直径5mmまで:5,500円
- • 以後1mmごと:1,100円
- • まとめてシミ治療(15個まで):15,000円
Qスイッチレーザーについては
こちらのHP本文もご覧ください。
3)ルビーフラクショナル──広範囲のシミと肌質の改善
ルビーフラクショナルは、Qスイッチルビーレーザーを面で広範囲に照射できる治療法です。
A) 技術的特徴:
- • 細い針状にルビーレーザーの光を分割し、直径9mmの照射野に点状に多数照射
- • 694nmという波長の特性により、メラニン色素に選択的に作用
- • シミの改善に加えて、熱作用により皮膚のキメやハリの向上も期待できる
B) 適応となる症状:
- • 頬全体など広範囲に散在するシミ
- • 小さなシミが多数ある
- • IPLでは取り切れない、やや濃いシミ
- • シミの改善とともに肌質も改善したい
C) 治療の特性: 一度でシミを完全に除去する通常のQスイッチルビーレーザーとは異なり、複数回の治療で段階的にシミを改善していく治療法です。
一度に強いパワーで照射するとやけどや色素沈着のリスクが高まるため、複数回に分けて治療を行います。
IPL治療では反応が不十分な、やや濃いシミに対しても効果が期待できます。
一方、Qスイッチルビーレーザーのように1回で完全に除去したい場合は、ポイント照射の方が適しています。
D) ダウンタイム: 照射後数日は赤みや点状のかさぶたが目立ちますが、メイクでカバー可能です。1週間以内にはほとんどの赤みやかさぶたが取れます。
E) 費用:
- • 両頬1回:35,000円
- • 両頬3回:94,500円
- • 両頬5回:140,000円 ※麻酔クリーム5g含む
ルビーフラクショナルについては
こちらのHP本文もご覧ください。
冬から治療を始めるメリット──春までの治療計画
冬から治療を始める利点は、紫外線が強くなる前に治療を完了できることです。
A) ノーリス(IPL)の場合
通常1ヶ月に1回のペースで3〜5回の治療を行います。
12月から始めれば、3月から4月には治療が完了し、紫外線が強くなる前に肌の状態を改善できます。
B) Qスイッチルビーレーザーの場合
ほとんどのシミは1回の治療で除去できます。
かさぶたが取れて肌が落ち着くまでに約1ヶ月かかるため、12月に治療すれば、1月には新しい皮膚に生まれ変わっています。
複数のシミがある場合も、冬の間に計画的に治療を進めることができます。
C) ルビーフラクショナルの場合
3〜5回の治療を1ヶ月ごとに行うことが標準です。
12月から開始すれば、春には肌質の改善が実感できます。
まとめ
冬は、紫外線量が夏の約5分の1という、シミの光・レーザー治療を始めるのに適した季節です。
当院では、患者さんの肌状態や悩みに合わせて、ノーリス(IPL)、Qスイッチルビーレーザー、ルビーフラクショナルという3つの治療法を提供しています。
それぞれに特徴があり、シミの種類や範囲、求める効果によって使い分けます。
今から治療を始めれば、紫外線が強くなる春までに治療を完了できます。
長年気になっていたシミや赤み、肌質の改善に、この冬から取り組んでみてはいかがでしょうか。
治療前には、日本皮膚科学会専門医による診察を行い、お一人おひとりに適した治療プランをご提案いたします。
全員に画像診断も行いますので、シミの種類や肝斑の有無なども正確に判断できます。
ご興味のある方は、お気軽にご相談ください。
日本皮膚科学会皮膚科専門医 服部皮膚科アレルギー科 服部浩明