冬の唇トラブル~予防編~|服部皮膚科アレルギー科|岡山市北区清心町の皮膚科・アレルギー科・美容皮膚科 冬の唇トラブル~予防編~|服部皮膚科アレルギー科|岡山市北区清心町の皮膚科・アレルギー科・美容皮膚科

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冬の唇トラブル~予防編~

冬の唇トラブル 予防とセルフケア

「毎日リップクリームを塗っているのに、すぐカサカサに戻ってしまう」

「唇が割れて痛くて、笑うのもつらい」

「口紅がきれいに塗れない」

冬になると、こうした唇のトラブルで悩まれる方が急増します。

実は、唇は顔の中で最もデリケートで、荒れやすい部分なのです。

しかも、良かれと思ってやっている「乾燥しないように舐める」「薬用リップクリームを塗る」といった習慣が、かえって悪化の原因になっていることも少なくありません。

今回から2回にわたり、冬の唇ケアについて、皮膚科専門医の立場から解説していきます。 第1回は「予防とセルフケア」についてお話しします。

なぜ唇はこんなに荒れやすいのか?

唇が荒れやすい理由

唇が他の皮膚と比べて圧倒的に荒れやすいのには、明確な理由があります。 顔の他の部分とは全く異なる、特殊な構造をしているのです。

❶ 皮脂腺がない→自然な保湿ができない

私たちの顔や体の皮膚には、「皮脂腺」という小さな器官があり、そこから分泌される皮脂が天然のクリームとなって、皮膚の表面を保護しています。

ところが、唇にはこの皮脂腺が全くありません。 つまり、自分で乾燥から守る仕組みがもともとないのです。

人間の皮膚は何も塗らなくてもある程度しっとりする仕組みになっていますが、唇は常に外から保湿剤を補ってあげないと、すぐにカサカサになってしまいます。

❷ 角層が極端に薄い=バリア機能が弱い

皮膚の一番外側には「角層」という防御壁があり、外部の刺激から肌を守り、内側の水分が逃げるのを防いでいます。

顔の他の部分では、この角層が40〜50層ほど重なっているのに対し、唇ではわずか8〜12層しかありません。

つまり、唇のバリア機能は顔の他の部分の4分の1程度しかないのです。

レンガの壁に例えるなら、顔は50枚のレンガが積み重なった頑丈な壁、唇はわずか10枚程度の薄い壁といったイメージです。 これだけ薄いと、外からの刺激(乾燥、摩擦、紫外線)が直接届きやすく、内側の水分も蒸発しやすくなります。

❸ 常に外部刺激にさらされる

唇は、常に外気にさらされています。

紫外線、冷たい風、乾燥した空気、食べ物の刺激、歯磨き粉の成分など、一日中さまざまな刺激を受け続けています。

しかも、話す・食べる・笑うといった動きで常に伸びたり縮んだりするため、引っ張られてヒビができたり、割れるリスクも高くなります。 つまり、唇は「最も無防備で、最も刺激を受けやすい」顔のパーツなのです。

冬に唇が特に荒れる理由

冬は唇に過酷な季節

ただでさえデリケートな唇ですが、冬は特に過酷な環境にさらされます。

以前、手荒れや乳児スキンケアの記事でもお話ししましたが、日本の冬は皮膚にとって二重の試練があります。

)屋外:低温・低湿度による乾燥 冬の屋外は気温が低く、空気中の水分量が著しく減少します。唇から水分がどんどん蒸発していくのです。

)屋内:暖房による極度の乾燥 暖房を使用すると、室内の湿度はさらに低下します。唇は常に外気にさらされているため、室内にいても乾燥のダメージを受け続けます。

)冷たい風による直接刺激 冬の冷たい風は、唇を直撃します。風によって水分が奪われるだけでなく、冷たさそのものが刺激となり、炎症を引き起こすこともあります。

つまり、冬の唇は「屋外でも屋内でも乾燥」という過酷な環境に置かれているのです。

「舐める」は絶対NG!その医学的理由

唇を舐めてはダメな理由

唇が乾燥すると、無意識に舐めてしまう方が多いのではないでしょうか。

一瞬は潤った気がしますが、実はこれが唇荒れを悪化させる最大の原因なのです。

1.唾液中の消化酵素が皮膚を攻撃する

唾液には、食べ物を分解するための消化酵素(アミラーゼなど)が含まれています。これらの酵素は、食べ物だけでなく、唇の薄い角層も分解してしまうのです。ただでさえ薄いバリアが、さらに破壊されてしまうわけです。

2.舐めた後の「過乾燥」が起こる

舐めた直後は唇が湿って潤った感じがしますが、唾液が蒸発する際に、唇にもともとあった水分まで一緒に奪ってしまいます。その結果、舐める前よりもさらに乾燥した「過乾燥」の状態になります。これは、手を洗った後に保湿しないと、洗う前よりも乾燥するメカニズムと同じです。

「舌なめ皮膚炎」という病気になることも

唇をなめる習慣が癖になると、以下のような悪循環に陥ります: 乾燥する → なめる → 唾液の酵素でバリアが壊れる → 過乾燥になる → さらに舐める

この繰り返しによって、唇だけでなく口の周り全体が赤くただれた状態になることがあり、これを「舌なめ皮膚炎」と呼びます。

唇の周りにぐるっと「どろぼうヒゲ」のような赤い輪ができる特徴的な症状です。

子供は大人と違って乾燥したり痒くなったりしてもついつい唇やその周りをベロベロなめてしまいます。それによって皮膚のバリアが完全に壊れてしまって皮膚炎になってしまうのです。

いったんこうなるとスキンケアだけで治すことはできないので皮膚科受診が必要になります。

「湿らせる」と「保湿する」は全く違います。

唇が乾いたときは、舐めるのではなく、リップクリームで保湿しましょう。

正しいリップケアの基本

正しいリップケア

では、どのようにケアすれば良いのでしょうか。

ドラッグストアに行くと、無数のリップクリームが並んでいますよね。

実は成分によって得意分野が全く異なります。唇の状態に合わせて使い分けることが大切です。

❶ ひび割れ・痛みがある→「ワセリン」

すでにひび割れや傷があり、リップクリームがしみる場合は、純粋な「ワセリン」が最適です。ワセリンは余計な成分が一切入っておらず、油膜を作って唇を保護(コーティング)してくれます。刺激がないので、どんな状態でも安心して使えます。ただし、ワセリン自体には水分を与える力はないので、「保護」が主な目的です。

❷ 乾燥が気になる→「セラミド」「ヒアルロン酸」配合

傷はないけれど乾燥が気になる場合は、「セラミド」や「ヒアルロン酸」など、水分を保持する成分が配合されたものがおすすめです。セラミドは、皮膚のバリア機能を構成する重要な成分で、角層の細胞間を満たして水分を逃がさない働きがあります。ヒアルロン酸は、自分の重さの何百倍もの水分を抱え込む保湿力があります。これらの成分は、唇に水分を与えながら、潤いを保ってくれます。

❸ 避けたい刺激成分―「メントール」「香料」

リップクリームの中には、「スースーして気持ちいい」メントールや、良い香りの香料が含まれているものがあります。しかし、これらの成分は刺激となることがあり、特に唇が荒れているときは避けた方が無難です。「清涼感」は一時的に気持ちいいかもしれませんが、唇の修復にはプラスにならないどころか、炎症を悪化させることもあります。荒れているときは、できるだけシンプルな成分のものを選びましょう。

❹ 日中は紫外線対策も忘れずに

唇も顔の他の部分と同じように、紫外線のダメージを受けます。むしろ、バリア機能が弱い分、紫外線による影響を受けやすいのです。日中外出する際は、「UVカット機能」が付いたリップクリームを選びましょう。SPF15〜30程度あれば、日常生活には十分です。

食後のリップケアが大切!

おしゃれなレストランで食事の後にナプキンで口を拭いている映像を見たことがありますよね。これ、実は皮膚科専門医からみると失格です。

食事の後の唇には食事や飲み物に含まれる大量の「食べ物汚れ」がついています。食事の後に油で汚れたお皿をちょっと拭いただけできれいにはなりませんよね? 唇も同じです。

外出時などはいつもできるとは限りませんが、食後はお水でもいいので「洗い流す」だけで拭くよりもよっぽど唇の表面の汚れを洗い流せます。

もし可能ならば、食後は唇を洗い流してからリップクリームを塗るようにしましょう。一度食後に唇を洗ってみるとどれだけべっとり汚れがついているか驚いて、毎回唇を洗いたくなりますよ。

リップクリームをぬるタイミングと回数

1.夜寝ている間

眠っている間は、唇を舐めることも、食べたり話したりすることもありません。つまり、保湿成分がじっくり浸透できる絶好のチャンスです。就寝前には、いつもより多めにリップクリームを塗りましょう。特に荒れがひどい場合は、ワセリンをたっぷり塗るのがおすすめです。

2.外出前に必ず塗る

夏は強烈な紫外線が、冬は冷たい風や乾燥した空気が唇を直撃します。真冬に温泉から湯気がもうもうと立ち上っている画像を見たことがありますか? 特殊なカメラで撮影すると、唇からも水分が蒸発しているのが見えます。外出前には必ずリップクリームを塗りましょう。UVカット機能付きのものなら、なお良いです。

3.こまめな塗り直しを

唇は常に動いているため、リップクリームは知らないうちに落ちてしまいます。「乾いたな」と感じる前に、こまめに塗り直す習慣をつけましょう。患者さんに「リップクリームを塗ってます?」と尋ねると、「3~4回も塗ってます!」と答えが返ってくることがあります。真冬はそれでは足りません。1日に10回くらいは塗ってみましょう。

塗り方のコツ―優しく、縦方向に

1.唇の縦ジワに沿って塗る 唇には細かい縦ジワがあります。リップクリームを塗る際は、この縦ジワに沿って、縦方向に優しく塗りましょう。横方向にゴシゴシこすると、摩擦で唇を傷めてしまいます。

2.力を入れず、優しくなでるように 唇はデリケートなので、強く押し付けたり、何度もこすったりする必要はありません。優しくなでるように、薄く伸ばすだけで十分です。

3.口角も忘れずに 口角(唇の端)は特に乾燥しやすく、切れやすい部分です。口を開けるときに大きく伸びるので切れて口角炎が頻発します。口角炎は一度なると治すのにかなり大変です。忘れずに丁寧に塗りましょう。

やってはいけないNG習慣

唇を痛めるNG習慣

良かれと思ってやっている習慣が、実は唇を傷めていることがあります。 以下のNG習慣に心当たりがある方は、今日から意識して止めましょう。

❌ 唇を舐める

前述の通り、舐めれば舐めるほど悪化します。乾いたと感じたら、舐めるのではなく、リップクリームを塗りましょう。

❌ 皮を剥く

めくれた皮が気になって、つい剥いてしまいたくなりますが、これは絶対にNGです。無理に剥くと、まだくっついている健康な皮膚まで一緒に剥がれ、出血や傷の原因になります。傷ができると、さらに治りが遅くなります。めくれた皮は、自然に剥がれるのを待つか、どうしても引っ掛かって逆に痛いようなら清潔なハサミで優しく切り取りましょう。

❌ ゴシゴシこする

リップクリームをぬるとき、口紅を落とすとき、タオルで拭くとき。唇を強くこすることは、すべて摩擦ダメージとなります。他の皮膚に比べて「とても皮膚が薄い場所」であることを思い出してください。常に「優しく」を心がけましょう。

❌ 刺激の強い口紅を毎日使う

長時間落ちないマットな口紅や、発色の強い口紅は、唇への負担が大きいことがあります。また唇を落とすためのクレンジングは「強力なアブラ落とし」です。当然皮膚のなけなしの油分・水分を奪っていきます。唇が荒れているときは、できるだけ口紅を控えましょう。

唇とその周囲はステロイド要注意!

詳しくは次回にお話しますが、唇とその周囲はステロイドの塗り薬の副作用が最も多い場所の一つです。

私たち皮膚科専門医でさえも唇とその周囲にステロイド外用剤を使うときには細心の注意を払います。

最近ステロイド外用剤を薬局などで買うことができるようになっています。虫刺され程度なら薬剤師さんと相談して使用してもトラブルになりづらいですが、顔や首、特に唇には安易なステロイド外用剤の使用は厳禁です。

次のような場合は皮膚科専門医を早めに受診してください。

こんな症状は皮膚科へ

受診の目安

セルフケアを2週間続けても改善しない場合や、以下のような症状がある場合は、早めに皮膚科を受診してください。

  • – 2週間以上治らない
  • – 痛みや出血がある
  • – 腫れや浸出液(じゅくじゅく)がある
  • – 唇の周りにも赤みや湿疹が広がっている
  • – 口角が切れて治らない
  • – かゆみが強い

これらの症状は、単なる乾燥ではなく、何らかの「口唇炎」という病気が隠れている可能性があります。 次回(第2回)では、治らない唇荒れの背景にある病気と、病院での治療について詳しく解説します。

まとめ

唇は、皮脂腺がなく、角層も極端に薄いため、顔の中で最も乾燥しやすく荒れやすい部分です。

冬の低温・低湿度と暖房による乾燥は、唇にとって特に過酷な環境です。

「舐める」「皮を剥く」といった習慣は、一時的に楽になる気がしても、実は唇を傷め、悪循環を生む原因です。

正しいリップケアの基本は:

  • – 症状に合わせて保湿成分を選ぶ(ワセリン、セラミド、ヒアルロン酸など)
  • – 刺激成分(メントール、香料)は避ける
  • – 食後は洗ってから塗る
  • – 就寝前はたっぷり・日中はこまめに塗る
  • – 縦ジワに沿って優しく塗る
  • – UVカット機能付きを日中使う

2週間セルフケアを続けても改善しない場合は、皮膚科を受診しましょう。

次回は、「治らない唇荒れの背景にある病気」について詳しく解説します。

(日本皮膚科学会皮膚科専門医 服部浩明)