
補助券が届いたらどうする?
「帯状疱疹ワクチンの定期接種のお知らせが届いたけど、これってどうしたらいいの?」
令和7年4月から、帯状疱疹ワクチンが定期接種となり、全国の市町村から対象となる方に補助券が送付されています。突然届いた通知に戸惑っている方も多いのではないでしょうか。
今回から3回に分けて、皮膚科専門医の立場から、帯状疱疹ワクチンについて分かりやすくお伝えします。第1回目は「補助券を受け取ったらどうすればいいか」「なぜ今接種することが大切なのか」についてお話します。(以後、当院のある岡山市を例にとって解説します)
帯状疱疹って、どんな病気?
まず、帯状疱疹がどのような病気かおさらいしておきましょう。
帯状疱疹は、子どもの頃にかかった「水ぼうそう」のウイルスが原因です。水ぼうそうが治った後も、ウイルスは神経の中に潜んでいて、体の免疫力が下がったときに再び活動を始めます。
症状としては:
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- 体の左右どちらか片側に、帯状に赤い発疹と水ぶくれが出る
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- ピリピリ、チクチクとした痛みを伴う
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- 重症化すると、皮膚症状が治った後も痛みが続く「帯状疱疹後神経痛」になることも
実は、80歳までに約3人に1人が帯状疱疹を発症するといわれています。決して他人事ではない病気なのです。
補助券が届いたら、まず確認すべきこと
岡山市では、令和7年度の対象者の方に6月下旬頃から順次、個別通知と予診票を送付しています。
【対象者を確認しましょう】
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- 65歳の方(令和7年度中に65歳になる方)
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- 70・75・80・85・90・95・100歳の方(5歳刻みの年齢)
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- 101歳以上の方(令和7年度のみ全員対象)
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- 60〜64歳で特定の免疫不全がある方
特に注意していただきたいのは、この機会を逃すと次のチャンスはないということです。
例えば、65歳の方が「来年でもいいかな」と思って見送ってしまうと、その5年後の70歳の時には定期接種の機会はありません。なぜなら、経過措置は令和11年度(2029年度)で終了し、それ以降は65歳の方のみが対象となるからです。
同様に、今年度70歳の方も、見送ってしまうと次の機会である75歳(令和12年度)には、すでに経過措置が終了しているため、定期接種を受けることができません。
なぜ「今」接種することが大切なのか
「まだ元気だから、もう少し後でもいいのでは?」と思われるかもしれません。しかし、帯状疱疹の発症リスクは50歳を過ぎると急激に上昇します。
さらに、以下のような方は特にリスクが高いことが分かっています:
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- 高血圧の方:発症リスクが約1.9倍
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- 糖尿病の方:発症リスクが約2.4倍
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- 関節リウマチの方
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- 腎不全の方
つまり、「今は健康」と思っていても、加齢とともにリスクは確実に上がっていくのです。
定期接種のメリット
- 費用の大幅な軽減
岡山市の場合:
ワクチン種類 自己負担額 生ワクチン(ビケン) 4,480円 不活化ワクチン(シングリックス) 11,080円/回(2回接種) 生活保護世帯や市民税非課税世帯の方は、事前申請により自己負担額が減額または無料になります。
- 安全性の確保
定期接種のワクチンは、国が有効性と安全性を十分に検証したものです。万が一重篤な副反応が起きた場合には、予防接種健康被害救済制度による補償も受けられます。
接種までの流れ
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- 補助券・予診票の確認
届いた書類をよく確認し、大切に保管してください。
- 補助券・予診票の確認
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- 医療機関の選択
岡山市の協力医療機関から選びます。かかりつけ医がいる場合は、まずそちらに相談してみましょう。
- 医療機関の選択
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- 予約
医療機関に電話で予約します。ワクチンの在庫確認もあるため、必ず事前予約が必要です。
- 予約
接種当日に必要なもの
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- 予診票(事前に記入)
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- 本人確認書類(保険証、運転免許証など)
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- (該当者のみ)身体障害者手帳1級の写しまたは診断書
今すぐ行動すべき3つの理由
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- 補助券には期限がある
令和7年度の対象者は、令和8年3月31日までに接種を完了する必要があります。不活化ワクチンは2回接種なので、早めの開始が必要です。
- 補助券には期限がある
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- 経過措置終了後は二度とチャンスがない
令和11年度で経過措置は終了。65歳以上の方は今回を逃すと二度と定期接種の対象にはなりません。
- 経過措置終了後は二度とチャンスがない
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- 年齢とともにリスクは上昇
「まだ大丈夫」と思っていても、発症リスクは確実に上がっていきます。
- 年齢とともにリスクは上昇
まとめ
帯状疱疹ワクチンの定期接種は、岡山市民の健康を守るための大切な制度です。補助券が届いたということは、「今があなたの接種のタイミング」というメッセージです。
特に重要なのは、65歳以上の方にとって、この経過措置期間中の機会は一生に一度だけということです。見送ってしまうと、5年後にはもう定期接種の対象外となり、全額自己負担での接種となってしまいます。
健康なうちに、将来の自分を守るための一歩を踏み出しましょう。
次回は、「生ワクチンと不活化ワクチン、どちらを選べばいいの?」について詳しくお話します。それぞれの特徴や効果、副反応について、分かりやすく解説していきます。
ご不明な点がありましたら、かかりつけ医や岡山市保健所にお問い合わせください。
当院でも接種を行っています。どのワクチンを打ちたいかわかっている場合は、電話で接種予約ができます。まず説明を聞きたい場合には保険診療の予約を取って受診してください(その場合はまず説明とどの注射を接種するかを決めるだけになりますので、当日の接種はできません)。
(日本皮膚科学会皮膚科専門医 服部浩明)