
2種類のワクチンがあるのはなぜ?
帯状疱疹ワクチンには、生ワクチン(ビケン) と 不活化ワクチン(シングリックス) の2種類があります。これはそれぞれ異なる技術で作られており、効果や特徴が異なるためです。どちらも国が認めた有効なワクチンですが、ご自身の状況に合わせて選ぶことが大切です。生ワクチン(ビケン)の特徴
どんなワクチン?
水ぼうそうウイルスを弱毒化した「生きているけれど病気を起こさない程度に弱めたウイルス」を投与し、免疫をつけます。メリット
- 接種回数が1回で済む
- 費用が安い(岡山市では自己負担4,480円)
- 長年の使用実績(水ぼうそうワクチンとしても使用)
- 接種後の局所反応が比較的軽い
デメリット
- 予防効果が不活化ワクチンより低い(帯状疱疹:約51%、帯状疱疹後神経痛:約60%〈3年後〉)
- 効果の持続期間が短め(5年程度)
- 70歳以上では効果がさらに低下
- 免疫が低下している方は接種できない
接種できない方
- 免疫抑制剤を使用中の方
- がん治療中の方
- HIV感染症の方
- 妊娠中の方
- 重度のアレルギーがある方
不活化ワクチン(シングリックス)の特徴
どんなワクチン?
ウイルス表面タンパク質のみを使った最先端の「組換えサブユニットワクチン」。免疫が低下している方でも接種可能です。メリット
- 帯状疱疹の予防効果:約97%(50歳以上)
- 帯状疱疹後神経痛の予防効果:約90%以上(3年後)
- 効果が長期間持続(10年以上)
- 年齢による効果低下が少ない(70歳以上でも高い効果)
- 免疫が低下している方でも接種可能
デメリット
- 2回接種が必要(2〜6か月間隔)
- 費用が高い(岡山市では自己負担11,080円 × 2回 = 22,160円)
- 副反応が出やすい(注射部位の痛み・腫れ:約80%、全身症状:約40〜60%)
ワクチン効果の比較
項目 | 生ワクチン(ビケン) | 不活化ワクチン(シングリックス) |
---|---|---|
帯状疱疹予防効果(50歳以上) | 51.3% | 97.2% |
帯状疱疹予防効果(70歳以上) | 37.6% | 89.8% |
接種回数 | 1回 | 2回 |
効果持続 | 約5年 | 10年以上 |
自己負担(岡山市) | 4,480円 | 11,080円 × 2回 |
副反応について知っておくべきこと
生ワクチン
- 注射部位の赤み・腫れ:約50%
- 全身症状はまれ
- 重篤な副反応は非常にまれ
不活化ワクチン
- 注射部位の痛み:約80%(強い痛みの場合も)
- 腫れ・赤み:約20〜30%
- 疲労感:約40%
- 頭痛:約30%
- 筋肉痛:約30%
- 発熱(37.5℃以上):約20%
どちらを選ぶべき?
生ワクチンをおすすめする方
- 費用をできるだけ抑えたい
- 1回の接種で済ませたい
- 副反応が心配
- 比較的若く(65歳)健康
不活化ワクチンをおすすめする方
- より高い予防効果を求める
- 長期間の効果を期待する
- 70歳以上
- 基礎疾患(糖尿病・高血圧など)がある
- 免疫低下の可能性がある
接種スケジュールの注意点
- 生ワクチン:1回接種。他の生ワクチンとは27日以上間隔をあける
- 不活化ワクチン:1回目接種後2〜6か月後に2回目(令和8年3月31日までに2回とも完了が必要)
よくある質問
Q:過去に帯状疱疹になりましたが接種できますか? A:はい、接種できます。再発予防のためにもおすすめです。 Q:どちらのワクチンが良いか迷っています。 A:年齢・健康状態・経済状況を踏まえ、かかりつけ医にご相談ください。 Q:他のワクチンと同時接種できますか? A:医師が必要と認めた場合は可能です。まとめ
- 効果重視:不活化ワクチン(シングリックス)
- 費用と手軽さ重視:生ワクチン(ビケン)
(日本皮膚科学会皮膚科専門医 服部浩明)