汗とニオイの悩み(2)|服部皮膚科アレルギー科|岡山市北区清心町の皮膚科・アレルギー科・美容皮膚科 汗とニオイの悩み(2)|服部皮膚科アレルギー科|岡山市北区清心町の皮膚科・アレルギー科・美容皮膚科

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汗とニオイの悩み(2)

 

前回の記事では、汗を出す汗腺は2種類あること、それにあわせてニオイも何種類かに分類できることをお話しました。今回は、特にワキのニオイにスポットを当て、対策や治療法があり、どんな場面で選ばれているのかをわかりやすく解説します。

 

外用抗コリン薬で「汗の蛇口」をしめる

 

汗が多い原因のひとつは、エクリン汗腺が過剰に働いてしまうこと。これは脳から出る「アセチルコリン」という物質が、汗腺にあるM₃受容体を刺激してしまうためです。

 

外用抗コリン剤は、この「アセチルコリン」が汗腺の受容体を刺激できないようにして、汗が分泌される量を減らしてくれます。

 

現在使える外用薬には、以下の2つがあります:

 
製品名 使用法 自己負担(3割) 特徴
エクロック®ゲル5% 夜に左右1プッシュずつ 約1,600円/月 乾くまで30分。初週は少量で赤みチェック
ラピフォート®ワイプ2.5% 就寝前に1包で両わき 約2,400円/月 翌朝洗い流さずOK。旅行にも便利
 

治療効果の目安としては「HDSS(多汗症重症度スケール)」というスコアを用います。臨床試験では、2週間でHDSS3(「服ににじむほどの汗で日常生活に支障が出る」)だった患者さんの約60%が、1〜2段階改善しました。

 

たとえば…

  • 替えシャツを持ち歩かなくてよくなった
  • 電車でつり革につかまっても気にならない
 

という感じです。HDSS3(日常生活に支障が出るほどの多汗症)の方が適応となりますので、処方には医師の診断が必要です。当院でも多くの患者さんが使用しています。どちらが効果的かは実際に使用してみないとわからない場合が多いです。

 

ボツリヌストキシン注射――半年の集中対策に

 

外用薬よりもさらに汗をしっかり抑えたい場合には、「ボツリヌストキシン注射」という選択肢もあります。

 
  • 効果:発汗量を50〜80%減少
  • 発現:注射から3〜7日で発汗抑制開始
  • 持続:平均で約6か月間
 

費用の目安:

  • 保険診療(HDSS3以上):自己負担 約2万~2.5万円程度
  • 自由診療:美容クリニックではそれぞれの施設で価格が違う
 

治療効果はかなり個人差があります。就活・面接・ブライダルなど、「半年だけでも汗を抑えたい」という場面におすすめです。ただし、術後の内出血や、ワキからの汗が減ることで他の部分の汗が増える代償性発汗などのリスクもありますから、まず医療機関を受診してきちんと説明を聞きましょう(当院ではボツリヌストキシン注射は行っていません)。

 

ニオイが主な悩みなら――アポクリン腺をターゲットに

 

脇の下に多いアポクリン汗腺からのニオイは、汗を抑えるだけでは改善できません。この場合には、においの元を減らす治療が効果的です。

 
方法 保険適用 自己負担目安 特徴
剪除法 約2~3万円 アポクリン腺を直視で除去。再発率5%未満
ミラドライ® ×(自由診療) 施設による 切らずに汗腺を破壊。ダウンタイムが短い
吸引法(ローラー) ×(自由診療) 施設による 小切開で吸引。ミラドライとの併用もあり
 

自由診療になるミラドライや吸引法は、「美容機器」とされ保険適用外です。施術を受ける際にはよく説明を聞きましょう。

 

剪除法は保険適応ですが、日帰りで行う施設から入院になる施設までありますので、まず、医療機関を受診してきちんと説明を聞きましょう(ミラドライ・吸引法・剪除法は当院では行っていません。剪除法をご希望の場合には関連病院に紹介しています)。

 

衣類や生活の工夫も“補助療法”として有効です

 

治療とあわせて、生活の中でできる工夫も大切です。

 
  • 混紡シャツ(綿35%/ポリエステル65%):汗じみを面で拡散し目立ちにくい
  • 銀イオン加工インナー:細菌増殖を防ぎ、におい予防に
  • 酸素系漂白剤でのつけおき洗い:皮脂酸化臭を分解して服からのニオイを改善
  • 制汗パッドの貼る位置:脇のやや前方に貼ると汗の通り道をカバー
  • 入浴時のワキの洗い方:「泡で優しく洗ってよく流す」のが正解。ゴシゴシ洗いはNG!
 

最後に:治療は“組み合わせ”がカギです

 

わきの悩みは「汗の量」「ニオイ」「タイミング(季節・イベント)」など、症状もニーズもさまざま。

 

一つの治療で全てを解決しようとせず、外用薬・注射・手術・生活習慣の組み合わせで柔軟に対処するのがポイントです。ハードルの低い塗り薬が出てきたことで、悩みから解放される人も増えてきました。

 

まずは今の状態を客観的に知るために、専門医を受診してみましょう。そして自分に合った最適な方法を探していくのが、いちばんの近道です。

汗やニオイの悩みについてはホームページ本文でも解説しています。

 

(日本皮膚科学会皮膚科専門医 服部浩明)