
この季節になると汗とそれに伴うニオイの悩みで受診される患者さんが増えてきます。
「汗っかきで手や汗がベトベト」「朝デオドラントを塗ったのに午後にはにおう」——そんなお悩み、ありませんか?
汗はもともと、体温を下げるための「天然のクーラー」です。しかし、汗の量や性質のバランスが崩れると、日常生活にさまざまな支障が出てきます。
汗対策やニオイ対策をするには、まず、汗が出るしくみとにおいが発生する理由を理解し、自分のタイプを見極めることが、対策の第一歩になります。
汗腺には2種類あるってホント?
汗を出す「汗腺(かんせん)」には2つのタイプがあります。
エクリン腺:
ほぼ全身に存在し、さらさらで無臭の汗を出します。体温調節の主役であり、手のひら、足裏、わき、額に特に多く分布します。
アポクリン腺:
わき、耳の中、外陰部など、限られた部位に集中しています。こちらは脂質やたんぱく質を含んだ汗を出すため、皮膚の常在菌によって分解されると、独特のにおいを発します。
とくに手のひら・足の裏は“すべり止め”として進化的に重要な部位で、緊張や驚きといった感情の高ぶりでも汗が出やすくなっています。
汗のにおい、あなたはどのタイプ?
汗のにおいは一括りにはできません。主に次の4タイプに分けられます。
タイプ | 主な成分・原因 | 代表的な部位 | よくあるシーン |
---|---|---|---|
エクリン汗臭 | アンモニア・乳酸 | 全身 | 運動後・真夏の外出 |
わきが臭 | 3-メチル-2-ヘキセノイン酸など | わき | 緊張時・思春期以降 |
皮脂酸化臭 | 酸化した皮脂のアルデヒド成分 | 胸・背中 | 夕方、シャツの黄ばみ |
足臭 | イソ吉草酸(菌の分解産物) | 足裏・靴内 | 革靴を長時間履いたとき |
自分のタイプを把握することで、効果的な対策が見えてきます。
たとえば、全身のエクリン汗が気になる方は汗の量をコントロールすることが大切。一方、わきが臭タイプの方は、アポクリン腺の活動を抑える工夫も必要です。
部位別「あるある」な悩みと対策
- 手汗×スマホ:指が滑って誤操作連発。深呼吸で交感神経を落ち着かせ、画面を拭いて冷却シートで指先をクールダウンすると快適です。
- わき汗×制服:午後の会議で脇の汗ジミが目立ってしまう…。黒やネイビーの服+汗取りパッドの併用でかなり軽減できます。
- 額汗×マスク:マスク内の湿気でメイク崩壊。髪の生え際で額汗を先回りして吸い取るのが有効です。
- 足汗×革靴:夕方の更衣室でムッとしたニオイ…。靴の中に染み込んだ汗や皮脂を細菌が分解してニオイを出しています。昼休みに中敷きを外して5分間だけでも通気させれば、細菌の繁殖を防ぎやすくなります。
汗とニオイ対策のまとめ
汗とニオイは、「汗腺のタイプ」と「細菌による分解」という2つの要素が関わっています。まずはご自身の「汗・ニオイタイプ」と「気になる部位」を整理してみましょう。それだけでも、次にとるべき対策が見えてきます。
★ワンポイントアドバイス
緊張で手汗が急に増えたときは、10秒かけてゆっくり腹式呼吸をしてみてください。交感神経の過剰なスイッチが少しずつオフになり、汗のコントロールがしやすくなります。
ここ数年で汗やそれに伴うニオイを治療する保険治療薬がいくつも登場しています。次回は治療や生活習慣について説明していきます。
汗やニオイの治療については、ホームページ本文でも解説しています。
(日本皮膚科学会皮膚科専門医 服部浩明)