紫外線と皮膚(2)|服部皮膚科アレルギー科|岡山市北区清心町の皮膚科・アレルギー科・美容皮膚科 紫外線と皮膚(2)|服部皮膚科アレルギー科|岡山市北区清心町の皮膚科・アレルギー科・美容皮膚科

Blog ブログ

紫外線と皮膚(2)

 前回のおさらい

 

前回のブログでは、紫外線の種類や紫外線が皮膚に与える影響について一般的なお話をしました。

 

今回は、もう少し具体的に紫外線が引き起こす「急性のダメージ」と「慢性的な変化」について、皮膚科専門医の視点で詳しく解説していきます。

 

今はちょうど紫外線トラブルが最も多い季節です。紫外線の正しい知識を身につけてダメージを予防しましょう。

 

🕒 紫外線による“肌老化”は何%?

 

皮膚の老化(しわ・たるみ・くすみ)の原因には、加齢や生活習慣もありますが…

 

実は、肌の老化の8割は紫外線によるものだといわれています(=光老化)。

 

👵「年齢のせい」と思っていたしわやしみの多くは、紫外線ダメージの蓄積によるものだったのです。

 

🔥 急性ダメージ:いわゆる「日焼け(サンバーン)」

 

紫外線、とくにUVBは肌の表面(表皮)に炎症を引き起こします。

 
  • 数時間後に赤み、熱感、ヒリヒリした痛み
  • 重症では水ぶくれ、発熱、脱水の危険も
  • 放置すると色素沈着が残ることもあります
 

☀ 日焼け後の正しい応急処置

 
  • まず冷やすことが最優先
    → 氷水を入れたタオルや冷水シャワーで冷却(20〜30分)
  • 広範囲の水ぶくれや強い痛みがあれば受診を
    → ステロイド外用薬や軟膏、場合によっては内服が必要
  • 脱水に注意
    → 冷やすと同時に水分補給も忘れずに
 

💡「赤くなっただけだから放っておこう」はNGです。
軽症に見えても、皮膚の中では炎症とダメージが進んでいます。

 

🌱 多形日光疹(PMLE)とは? ~ただの日焼けと見分けよう~

 
項目 日焼け 多形日光疹
発症までの時間 数時間後 日光に当たってから数時間以内〜翌日
見た目 広い範囲にぼんやり赤く 小さなブツブツ、水ぶくれ、かゆみ
分布 顔、肩など広範囲 手の甲〜前腕に左右対称に出やすい
季節 通年(特に夏) 春〜初夏に多い(5月前後に多発)
 

👩‍⚕️当院でも「急に湿疹が出た」と受診され、実は多形日光疹だったケースはよくあります。

 

⌛ 慢性的ダメージ:光老化(フォトエイジング)

 

長年紫外線を浴び続けることで、皮膚には“目に見えない進行性の変化”が起こります。

 

■ UVAのメカニズム:じわじわ皮膚を劣化させる

 
  • UVAはUVBより波長が長く、皮膚の奥の「真皮層」まで届きます。
  • コラーゲンを破壊し、肌のハリや弾力を失わせる
  • 活性酸素(ROS)を生じさせ、細胞の老化を加速
  • 皮膚の免疫細胞を低下させ、感染症・がんのリスクを増大
 

🧪 コラーゲンは皮膚の“骨組み”です。
UVAはそれを分解する酵素(MMPs:マトリックスメタロプロテアーゼ)を活性化し、皮膚のハリを崩します。

 

■ 色素病変:しみ・そばかす・肝斑のメカニズム

 
  • 紫外線(特にUVB)は、皮膚の「メラノサイト」という細胞を刺激し、メラニンを過剰につくります。
  • 本来は紫外線からDNAを守るための自然な防御反応
  • でも、繰り返し刺激されることで色素が定着
  • 肝斑・炎症後色素沈着・老人性色素斑などが出現
 

🔍 特に日本人はスキンタイプIII〜IV型(やや色白〜黄味肌)で、日焼けはしにくいが、色素沈着が残りやすい傾向があります。

 

🧬 紫外線と皮膚がんの関係

 

長期間にわたる紫外線曝露は、皮膚細胞のDNAに傷をつけ、修復ミスが繰り返されることで皮膚がんのリスクが上昇します。

 
種類 特徴
基底細胞がん 顔面に多く、比較的進行は遅い
有棘細胞がん 手背や頭など露出部に多い
悪性黒色腫(メラノーマ) 非常に進行が速く、命に関わる
 

🌟 子どもの頃の強い日焼けがあると、大人になってからのメラノーマ発症リスクが2倍以上に増加するという報告もあります。

 

💊 光線過敏症:紫外線と“薬”が引き起こす皮膚炎

 

紫外線が引き金になる「光線過敏症」は、意外と多くの方に見られます。
薬剤によるものが多く、以下のような薬が特に注意を要します。

 
薬の種類 具体例
抗菌薬 テトラサイクリン系(ミノマイシン)、ニューキノロン系(クラビットなど)
解熱鎮痛薬(NSAIDs) ケトプロフェン、ナプロキセン、ピロキシカムなど
利尿薬 チアジド系(ヒドロクロロチアジド)
その他 抗がん剤、漢方薬、サプリメントなどでも報告あり
 

とくにケトプロフェンは湿布製剤にも広く使われており、使用から数週間〜数か月たってから光線過敏症を発症することもあります。
👉 ケトプロフェンを含む湿布を使用中の方は、貼った部位を紫外線に当てないよう注意が必要です。

 

🧴 見分け方と対処法

 
  • 日光が当たった部位だけに、赤み・ぶつぶつ・水ぶくれが出る
  • 境界が明確で、薬をやめると改善
  • 症状があればすぐ皮膚科を受診し、原因薬の特定と中止が重要
 

👩‍⚕️薬の副作用は、たとえ長年使っていた薬でも突然出ることがあります。
自己判断せず、医師にご相談ください。

 

✍️ まとめ

 

紫外線は「日焼けするだけ」の存在ではありません。
肌の老化、しみ、アレルギー、がん――その背景には紫外線が潜んでいます。

 

でも、紫外線は“避けられない敵”ではありません。
正しい知識と習慣で、肌を守ることができます。

 

(日本皮膚科学会皮膚科専門医 服部浩明)