
紫外線から肌を守るには?
これまでの2回で、紫外線が肌に与える影響について詳しくお話ししてきました。
今回は、そうしたリスクから肌を守るために、実際にどのような対策を取るべきかを「日焼け止め」「衣類・生活習慣」「肌のバリア機能のケア」など、多角的に解説していきます。
今回のテーマ
今回は「防ぐ・浴びない・肌を整える」を柱に、最新のエビデンスも交えながら実践的な紫外線対策を解説します。
1. ☀ 生活紫外線にこそ要注意
春~秋の通勤、買い物、洗濯物干しなどの中で浴びる“蓄積型のUVA”こそ、しわ・たるみの大きな原因です。
- 薄曇りの日でも晴天時の60~90%の紫外線が地上に到達します
- UVAは雲も通り抜けやすく、量がほとんど減りません
- 窓ガラス(単板)でも約70~75%のUVAが透過
→ UVカットフィルムのない職場や車内では要注意です。
2. 🧴 日焼け止め ―“量・塗り直し・広さ”がカギ
表示 | 意味 | 日常生活での目安 |
---|---|---|
SPF | UVB(赤み・炎症)防御 | 15–30:通勤・買い物/30–50+:屋外活動・高地 |
PA | UVA(しわ・たるみ)防御 | PA+++以上が推奨 |
推奨量:顔全体で500円玉大(約0.8g) → 国際基準は2mg/㎠
塗布のタイミング:外出の15~30分前に
塗り直し:汗・皮脂・こすれを考慮して2~3時間おきに重ね塗り
塗り忘れがちなゾーン:耳、首、髪の生え際、手の甲、足の甲、デコルテ
💡 SPF50+を少量より、SPF30を十分量・こまめに塗る方が、実際の防御効果は高い
3. 🧢 物理的ブロック ―“浴びない”工夫を
(1) UVカット衣類・小物の活用
- つば広帽子(ブリム7cm以上):顔全体のUVを60–75%減少
- サングラス:UVA/UVBを99%カットする表記のあるもの
- 長袖・アームカバー・手袋:UPF表示があると安心
(2) 室内・車内のUVA対策
- UVカットフィルム
- 遮光カーテン
- 高透過率UVフィルム(可視光透過率70%以上)
4. 🕙 紫外線ピークを避ける
午前10時〜午後2時が紫外線のピークです。
屋外イベント・園外保育・部活動は時間帯の工夫やタープ・日よけの設置が有効です。
買い物やランニングもできれば朝夕にシフトしましょう。
5. 🧴 肌のバリア機能を支えるスキンケア
- 保湿:洗顔後すぐ、低刺激の保湿剤(ヒアルロン酸・セラミド配合)
- 抗酸化ケア:ビタミンC誘導体、ナイアシンアミド配合の化粧品
- 日焼け後の応急処置:冷却、抗炎症薬の外用、水ぶくれは皮膚科受診
🚨 適切な処置が遅れると、色素沈着や瘢痕の原因になります。
6. ⚠ 紫外線感受性が高まるシーンに注意
状態・薬剤 | 注意点 |
---|---|
妊娠・思春期・更年期 | ホルモン変動で肝斑・色素沈着が起こりやすい |
ニキビ・湿疹治療中 | バリア機能の低下/炎症後色素沈着のリスク |
ピーリング・レーザー後 | 最低2週間はSPF30以上を厳守 |
ケトプロフェン湿布、テトラサイクリン系抗菌薬、NSAIDs | 数か月後でも光線過敏を発症するため、遮光を徹底 |
7. 📅 年間通じた“歯みがき”UVケア
日本では3月から紫外線量が急増し、10月まで高値を維持します。冬でもUVAは安定して地表に届いています。
💡 対策の基本は「塗る・浴びない・整える」。
これを365日習慣化することで、10年後のしみ・しわ・皮膚がんリスクを確実に下げることができます。
✍️ まとめ ― 未来の肌は“今日からの積み重ね”で守れる
対策の柱 | 内容 |
---|---|
塗る | 正しい量・頻度のサンスクリーン |
防ぐ | 帽子・サングラス・衣類・窓フィルムなど |
避ける | 紫外線ピーク時間・窓際・不要な屋外曝露 |
整える | 保湿・炎症ケアで「受けにくい肌」を作る |
紫外線やお肌のことで気になることがあれば、いつでもご相談ください。
(日本皮膚科学会認定皮膚科専門医 服部浩明)