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頭のニオイや抜け毛の悩み

脂漏性皮膚炎のにおいと抜け毛

「夕方になると、自分の頭のにおいが気になる」
「フケだけでなく、最近シャンプーのときの抜け毛がやけに多い」
「枕カバーが黄色く汚れて、なんだか独特のにおいがする」
——こうした悩みで受診される方は少なくありません。

前回、脂漏性皮膚炎はフケやかゆみだけでなく、さまざまな症状を引き起こすことをお話ししました。今回は、その中でも人に相談しにくい「頭皮のにおい」と「抜け毛」について詳しくお話しします。

フケ・べたつき・かゆみ

シャンプーしたのに夕方にはにおう——その正体は?

「毎日洗っているのに頭がにおう」というのは、本人にとって気になる悩みです。においの問題は目に見えないぶん、「自分だけが気づいているのか、周囲にもわかっているのか」と余計に気になりますよね。

まずお伝えしておきたいのですが、これも前回お話しした通り「不潔にしているから」ではありません。

脂漏性皮膚炎では、マラセチアというカビの一種が皮脂を分解しています。このときに生じる「遊離脂肪酸」という物質が皮膚の上で酸化すると、独特の不快なにおいを発します。さらに、頭皮にいる細菌(ブドウ球菌など)が汗や皮脂と混ざり合うことで、においが強くなります。

つまり、においの原因はマラセチアが皮脂を分解するときの「副産物」であり、洗い方の問題ではないのです。

「シャンプーしたのに数時間でにおう」という方は、皮脂の量やシャンプーの種類の問題ではなく、頭皮の常在菌バランスの乱れが原因であることが多いのです。市販のシャンプーをいくら変えても根本的な解決にならないのは、このためです。

逆に言えば、脂漏性皮膚炎をきちんと治療してマラセチアの過剰な増殖を抑えれば、においも改善が見込めます。においの悩みで来院される方には、まず頭皮の状態を確認して脂漏性皮膚炎がないかどうかをチェックしています。

「におい対策」が裏目に出ていませんか?

においが気になると、つい「もっとしっかり洗おう」「洗浄力の強いシャンプーに変えよう」「1日2回洗おう」と考えてしまいます。

しかし、前回もお話ししたように、洗いすぎは皮脂の取りすぎにつながります。皮脂が取られすぎると、頭皮は「足りない」と判断してかえって皮脂を大量に分泌します。皮脂が増えればマラセチアのエサが増え、分解で生じるにおいの原因物質も増える——洗えば洗うほどにおいが強くなるという悪循環に陥ります。

においの悪循環

また、アルコール成分を含むヘアトニックやスカルプローションも注意が必要です。アルコールは頭皮の水分を奪い、バリア機能を壊すため、炎症を悪化させてしまうことがあります。

においが気になったときに必要なのは、洗浄力を上げることではなく、においの根本原因であるマラセチアと炎症に対処することです。これは市販品だけでは難しい場合が多く、皮膚科での治療が近道になります。

脂漏性皮膚炎で髪が抜ける?

「フケや頭皮のべたつきが気になるようになってから、抜け毛が増えた気がする」——こうした相談もよくお受けします。

脂漏性皮膚炎は、それ自体が直接的に髪の毛を抜く病気ではありません。しかし、頭皮の炎症が毛根の周辺にまで及ぶと、髪の毛の成長サイクルが乱れて、抜け毛が増えることがあります。

ここで知っておいていただきたい大切なことがあります。

脂漏性皮膚炎による抜け毛は、炎症が治まれば再び髪が生えてきます。

これがAGA(男性型脱毛症)との大きな違いです。AGAは男性ホルモンの影響で毛根自体が萎縮していく進行性の疾患ですが、脂漏性皮膚炎による抜け毛は「炎症という外からのダメージ」が原因です。原因を取り除けば、毛根は回復できます。

ただし、炎症を何年も放置して繰り返していると、毛根そのものが傷ついて回復が難しくなる可能性があります。気になる方は早めに皮膚科で相談してみてください。

「薄毛=AGA」とは限らない

抜け毛が気になったとき、インターネットで検索するとまず出てくるのがAGA(男性型脱毛症)の情報です。最近はオンラインでAGAの薬を処方してもらえるサービスも増えていますよね。

しかし、ここに落とし穴があります。

抜け毛の原因は?

AGAの治療薬は、脂漏性皮膚炎による抜け毛には効きません。原因がまったく違うからです。AGAの薬(フィナステリドやデュタステリド)は男性ホルモンの作用を抑えるものであり、マラセチアによる頭皮の炎症にはなんの効果もありません。もし抜け毛の原因が脂漏性皮膚炎であれば、AGAの薬を何ヶ月飲み続けても改善しないまま、時間とお金を無駄にしてしまうことになります。

さらに、AGAと脂漏性皮膚炎は別の病気でありながら、同じ人に同時に起きる(併発する)ことがあります。当院でもAGAの治療を希望して来院された方の頭皮を診ると、脂漏性皮膚炎を合併しているケースが少なくありません。

この場合、まず脂漏性皮膚炎の炎症を治療しないと、AGA治療の効果も十分に発揮されません。炎症で毛根がダメージを受け続けている状態では、AGA治療薬も力を発揮しきれないからです。

「抜け毛が気になるからAGAの薬」とすぐに飛びつくのではなく、まず頭皮の状態をきちんと確認してもらうことが大切です。

育毛剤やスカルプケア商品で治る?

「育毛シャンプー」「スカルプエッセンス」「頭皮クレンジング」——ドラッグストアやネット通販には、頭皮の悩みに対応する商品がたくさん並んでいます。

これらの商品の中には、頭皮環境を整えるという意味で一定の役割を果たすものもあります。しかし、脂漏性皮膚炎のように頭皮に炎症が起きている状態では、市販品だけで解決するのは難しいのが現実です。

実際に、「育毛剤を使っているのに抜け毛が止まらない」と受診される方の中には、そもそも脂漏性皮膚炎が抜け毛の原因だった、というケースがよくあります。炎症という「火事」が起きているときに、育毛成分という「肥料」をいくら与えても、まず火を消さなければ効果は出ません。

炎症を治療した後の「再発予防」や「頭皮コンディションの維持」としては市販品にも役割があります。しかし順番が大切です。まず皮膚科で炎症を治し、その上で日常ケアを組み合わせる——これが最も効率のよいアプローチです。

思春期のお子さんのフケやにおい——親御さんに知っておいてほしいこと

脂漏性皮膚炎は30代〜40代に多い病気ですが、思春期にも起こります。思春期は男女ともに性ホルモンの分泌が急激に増え、皮脂腺が活性化する時期です。ニキビができやすくなるのと同じ仕組みで、頭皮の皮脂も急に増えます。

思春期の頭皮悩み

問題は、この年代の子どもたちはフケやにおい、抜け毛といった症状があっても、親に相談しにくいということです。「不潔だと思われるのではないか」「からかわれるのではないか」という不安から、ひとりで抱え込んでしまうことがあります。友人関係や学校生活にも影響が出てしまうことがあるのです。

当院でも、保護者の方に連れられて受診したお子さんが「実はずっと気にしていた」とおっしゃるケースがあります。

親御さんにお願いしたいのは、お子さんの頭皮の状態をときどき気にかけてあげることです。フケが多い、頭皮が赤い、においが気になる——こうした変化に気づいたら、「ちゃんと洗いなさい」と言う前に、まず皮膚科に連れてきてあげてください。前回お話しした通り、脂漏性皮膚炎は清潔にしていても起こる病気です。洗い方の問題ではなく、治療で改善できるものだと知っていただければ、お子さんの負担を軽くしてあげられます。

思春期はただでさえ見た目が気になる年代です。フケやにおいの悩みは本人にとって想像以上に大きな問題になっていることがありますので、早めのケアをおすすめします。

においも抜け毛も、原因がわかれば対処できます

頭皮のにおいや抜け毛の原因が脂漏性皮膚炎であれば、適切な治療で改善が見込めます。原因を特定しないまま市販品をあれこれ試し続けるよりも、まず皮膚科で診断を受ける方が結果的に近道です。

抜け毛の原因は脂漏性皮膚炎だけではなく、AGAや甲状腺疾患、栄養不足、薬の副作用など多岐にわたります。これらを正確に見分けるには、頭皮の状態を直接観察し、必要に応じて血液検査などを行える皮膚科専門医の診察が必要です。

次回は、脂漏性皮膚炎の具体的な治療法とセルフケアについてお話しします。

日本皮膚科学会皮膚科専門医 服部浩明