
アゼライン酸を知っていますか?
アゼライン酸は、小麦や大麦に自然に含まれる「ジカルボン酸」という成分の一種です。
皮膚に塗ることで、ニキビ、酒さ(赤ら顔)、肝斑(かんぱん)など、さまざまな皮膚トラブルに効果があることが証明されています。
たとえば、皮膚が炎症で赤く腫れたり、毛穴に皮脂が詰まってニキビになったりする現象がありますが、アゼライン酸はその「原因そのもの」に作用してくれる薬です。
当院でも20%のアゼライン酸クリームを多くの患者さんが使っていますが、今日はそのアゼライン酸がそもそもどんな成分なのかのお話をします。
どう効くの?~3つの作用ポイント~
1)炎症を抑える作用
皮膚の中で暴れてしまう免疫タンパク質(例:IL-1、TNF-αなど)や、活性酸素(肌を傷つけるサビのようなもの)を抑えてくれます。
たとえるなら、「火事になりかけている肌の中で、消火器のように炎を抑える役割」をしてくれるのです
2)美白作用
シミや肝斑の原因になるメラニンを作る酵素「チロシナーゼ」をブロックします。
炎症が起こると皮膚の細胞がダメージを受け、メラニン色素が皮膚に沈着します。しかも同時に、メラニンを作るメラノサイトという細胞が活性化して、メラニンがたくさん作られてしまいます。
アゼライン酸はチロシナーゼをブロックして「シミの元をつくらせない働き」をしてくれるのです。
3)皮脂の分泌を抑えて毛穴づまりを防ぐ
人間の毛穴にはかならず皮脂を分泌する「皮脂腺」という組織がついています。特に思春期にはそこから大量の皮脂が出ます。お皿についた油汚れもベトベトしてくっついていますよね。皮脂もアブラなので、毛穴の出口でべとべとといろいろなものをくっつけて毛穴を塞いでしまいます。
出口の無くなった毛穴に皮脂が溜まるとニキビになります。
アゼライン酸は油でつまりかけた毛穴を掃除して、皮脂が外に出やすい環境を作ります。
20%アゼライン酸の臨床的効果
- 酒さにおいて、「丘疹や膿疱(ぶつぶつ)」の減少に高い効果(高い科学的根拠レベル)が確認されています。
- ニキビにおいて、皮脂量と炎症性病変の大幅な減少が認められています。
- 肝斑において、4%ハイドロキノン(美白剤)と同程度の有効性を持ちながら、副作用(刺激感や色素沈着)は少ないとされます。
- 光老化(紫外線による肌の老化)に対して、細胞の老化を抑える効果も報告されており、PPARγという抗老化に関わる因子を活性化させます。
アゼライン酸は「肌のマルチケア選手」
アゼライン酸は、「美白もニキビも、赤ら顔も気になる」という多機能ニーズに応えられる珍しい成分です。
特に副作用が少なく、長期的なスキンケアにも向いている点は、医師としても非常に評価できます。
次回はアゼライン酸とニキビ治療の関係をお話しますね。