
今日から当院でも毎日のように施術をしている「ケアシス」(エレクトロポレーション)についてお話していきます。
「スキンケアを毎日しているのに、なんとなく効果を感じにくい…」
そんな声を、患者さんからよくお聞きします。
実はこれは、私たちの肌が“とても優秀なバリア”を持っているからこそ起こる現象です。
肌は超高性能の“セキュリティゲート”
肌の一番外側には、異物の侵入を防ぎ、水分を逃がさないための「角層(かくそう)」という防御壁があります。
この角層はとても頑丈で、まるでレンガを隙間なくつなぎ合わせた壁のような構造になっています。
この壁では、レンガ部分が角層細胞、そのすき間を埋めてレンガ同士をつなぐ部分が脂質(セラミドなど)です。
脂質の層は水を通さず、外からの刺激や菌、ホコリなどをしっかりブロックしています。
でもこの「守りの強さ」が、美容成分を奥まで届けることをむしろ難しくしているのです。
分子量500ダルトンの壁って?
「分子量500ダルトンの壁」と聞くと、難しそうに感じますよね。
でもこれは、肌にとって“通してもいい荷物の大きさ”を決めたルールのようなものです。
分子というのは物質の最小単位のことで、「ダルトン(Da)」というのはその“重さと大きさ”を表す単位です。
500ダルトンより大きい成分は、ほとんど肌のバリアを通れないと考えられています。
たとえば…
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- 水:18ダルトン(とても小さい)
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- ビタミンC:176ダルトン
- ヒアルロン酸:数千〜数百万ダルトン(とても大きい)
つまり、ヒアルロン酸やコラーゲンなどの人気美容成分は、塗るだけでは肌のバリアを通れないということです。
これはまるで、「手荷物はOKだけど、大きなスーツケースは持ち込めません」という空港のセキュリティゲートのようなものです。
エレクトロポレーションとは?
この“厳重なバリア”を一時的に通過させるために開発されたのが、エレクトロポレーションという技術です。
これは、肌にごく短い時間だけ電気のパルスを当てることで、角層の脂質のすき間に“見えないほど小さなトンネル”を一瞬だけ開ける方法です。
トンネルは数ミリ秒(1/1000秒)しか開いていませんが、そのすき間から通常は通れない大きな美容成分を肌の中へ通すことができます。
そしてすぐにトンネルは自然に閉じるため、肌にダメージを残すことはありません。
まるで、閉じた門に一瞬だけ秘密の通路を開けて、大切な荷物を届けるようなイメージです。
エレクトロポレーションの特徴
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- 針を使わず、肌に傷をつけない
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- ヒアルロン酸やビタミンC誘導体など、高分子成分も導入可能
- 一時的に“通すスイッチ”を入れるだけなので、安全性が高い
当院ではこのエレクトロポレーション技術を応用した施術を行い、従来のスキンケアでは届かなかった成分を、肌の奥までやさしく届けています。
今日のまとめ
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- 肌のバリアは「レンガとつなぎ材」でできた強固な壁
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- 「500ダルトンの壁」は、肌が通すことのできる“荷物の大きさ制限”
- エレクトロポレーションは、一瞬だけその壁にトンネルを開けて有効成分を届ける技術
次回も引き続きエレクトロポレーションについてお話していきます。「ケアシス」(エレクトロポレーション)については、ホームページ本文でもご紹介しています。
(日本皮膚科学会皮膚科専門医 服部浩明)