光線治療(2)全身型と局所型治療機の違い|服部皮膚科アレルギー科|岡山市北区清心町の皮膚科・アレルギー科・美容皮膚科 光線治療(2)全身型と局所型治療機の違い|服部皮膚科アレルギー科|岡山市北区清心町の皮膚科・アレルギー科・美容皮膚科

Blog ブログ

光線治療(2)全身型と局所型治療機の違い

光線治療のイメージ画像

ナローバンドUVBとエキシマライト~2つの光線治療の使い分け~

前回は、紫外線がなぜ皮膚病を治すのか、その不思議なメカニズムについてお話ししました。「紫外線で免疫を整えて、かゆみも和らげる」という光線治療の基本を理解していただけたでしょうか。
今回は、実際の治療で使われる2つの主要な機器「ナローバンドUVB」と「エキシマライト」について、その違いと使い分けを詳しく解説していきます。「どっちの治療が自分に向いているの?」「なぜ2種類も必要なの?」そんな疑問にお答えしながら、それぞれの特徴と、当院でどのように使い分けているかをご紹介します。

全身型ナローバンドUVB:立ったまま全身ケア

ナローバンドUVBの機器は、ちょうど日焼けマシンのような縦長のパネルのような形をしています。パネルの前に立っているだけで、照射面に均等に紫外線が当たる仕組みになっています。局所型のように何度も体の向きを変えたり照射部分を移動したりする必要はありません。
「全身に症状がある」「背中など、自分では薬を塗りにくい場所にも症状がある」こんな方にとって、この全身型は理想的な治療法です。
治療時間は症状の範囲にもよりますが、通常は数分程度。服を脱いで機器の前に立っているだけなので、特に難しいことはありません。当院では手すりを壁に取り付けて足腰の弱い方でも照射しやすいようにしています。

局所型エキシマライト:ピンポイントの集中治療

一方、エキシマライトは、ドライヤーのような形をしたハンディタイプの機器です。医師や看護師が手に持って、症状のある部分だけに正確に光を当てることができます。
照射時間は驚くほど短く、1箇所あたり数秒から1分程度。高出力だからこそ、短時間で十分な効果が得られるんです。
「手のひらだけに症状がある」「頭の一部分だけ髪が抜けている」「顔の一部に白斑がある」このような限られた範囲の症状には、エキシマライトが最適です。健康な皮膚には光を当てずに済むので、余計な日焼けの心配もありません。

症状に応じた使い分けが治療成功のカギ

広範囲の症状にはナローバンドUVB アトピー性皮膚炎や乾癬といった体の広い範囲に症状が出やすい病気の場合、ナローバンドUVBが第一選択になります。
例えば、背中全体、お腹、腕、脚と、体のあちこちに症状がある患者さんの場合を考えてみましょう。これをエキシマライトで1箇所ずつ治療していたら、何時間もかかってしまいます。それに、照射し忘れる場所が出てくる可能性もあります。
ナローバンドUVBなら、わずか数分程度で全身をカバーできます。週に1〜2回の通院でも、無理なく続けられる治療法です。
難治性の局所病変にはエキシマライト 「他の部分は良くなったのに、ここだけ治らない」「ステロイドを塗っても、この部分だけ効かない」そんな頑固な症状には、エキシマライトの出番です。
高出力で集中的に照射することで、通常の治療では改善しにくかった症状にも変化が期待できます。実際、ナローバンドUVBで何回治療しても変化がなかった白斑が、エキシマライトに変更すると色素が戻り始めた、という例もあります。

実際の治療はこんな流れで進みます

初回診察:あなたに最適な治療法を決定 初めて光線治療を受ける際は、まず皮膚科専門医による詳しい診察があります。
  • 症状の範囲と程度の確認
  • これまでの治療歴の聞き取り
  • 光線治療が適しているかの判断
  • 使用する機器の選択
この時、日光に当たると赤くなりやすいか、黒くなりやすいかといった「肌質」も確認します。これによって、初回の照射量を決めます。(場合によって照射前に試験的に光に対する過敏性をテストする場合もあります)。
治療開始:少ない量から始めて徐々に増やす 光線治療は、いきなり強い光を当てるわけではありません。最初は、あなたの肌がどの程度の光に反応するかを見るため、少ない照射量から始めます。
「もっと強くしてもらった方が早く治るのでは?」そう思われるかもしれませんが、急激に照射量を増やすと、ひどい日焼けのような状態になってしまう危険があります。ゆっくり、確実に、これが光線治療の鉄則です。
治療の頻度と期間 基本的には週1回以上の治療が推奨されています。「毎日来た方が早く治りますか?」という質問をよくいただきますが、実はそうではありません。皮膚が光に反応して、免疫が調整されるまでには時間が必要なので、適度な間隔を空けることが大切なのです。

副作用は?安全性は大丈夫?

起こりうる副作用と対処法 光線治療で最も多い副作用は、照射部位の赤み(日焼けのような反応)です。これは通常、治療後数時間から1日程度で落ち着きます。もし赤みが強く出た場合は、次回の照射量を調整します。
また、治療を続けていると、照射部位が少し黒ずんでくることがあります(色素沈着)。これは一時的なもので、治療終了後、数ヶ月かけて元の肌色に戻っていきます。
従来の治療法より格段に安全 「紫外線を当てて、将来皮膚がんになったりしない?」この心配はもっともです。でも、現在使われているナローバンドUVBやエキシマライトは、昔のPUVA療法に比べて、発がんリスクは極めて低いことがわかっています。
有害な波長をカットし、治療に必要な波長だけを使っているからです。実際、これまでの研究では、明確な発がんリスクの上昇は報告されていません。

当院での光線治療の特徴

両方の機器を完備している強み 当院では、全身型ナローバンドUVBと局所型エキシマライトの両方を導入しています。これにより、患者さん一人ひとりの症状に応じた、最適な治療を提供できます。
例えば、最初は全身型で広範囲に照射し、頑固な部分だけエキシマライトでさらに集中治療する、といった組み合わせも可能です。
保険適用で続けやすい治療費 光線治療は多くの皮膚疾患で保険適用が認められています。3割負担の場合、1回の治療費は約1,000円程度。高額な生物学的製剤(月額数万円〜数十万円)と比べれば、経済的負担は大幅に軽減されます。
専門医による安全な照射量管理 当院では、日本皮膚科学会認定の皮膚科専門医が、患者さんの肌質や症状の変化を細かくチェックしながら、照射量を調整しています。
「前回少し赤くなった」「もう少し強くしても大丈夫そう」こうした微調整を重ねることで、副作用を最小限に抑えながら、最大の効果を引き出していきます。

どちらの治療を選ぶべきか迷ったら

「自分の症状には、どちらの治療が向いているんだろう?」そんな迷いがあるのは当然です。実際、両方の治療法にメリットがあり、時には併用することで相乗効果が期待できることもあります。
大切なのは、まず専門医による正確な診断を受けることです。症状の種類、範囲、これまでの治療歴、ライフスタイルなど、様々な要素を総合的に判断して、最適な治療法を提案させていただきます。

まとめ:2つの光線治療があなたの選択肢を広げる

ナローバンドUVBとエキシマライト。わずか3nmの波長の違いと、機器の形の違いが、それぞれ異なる強みを生み出しています。
  • 広範囲の症状を効率的に治療するナローバンドUVB
  • 難治性の局所病変を集中的に攻略するエキシマライト
この2つの武器を使い分けることで、これまで「塗り薬だけでは改善しない」「内服薬は副作用が心配」と悩んでいた多くの患者さんに、新たな希望をお届けできるようになりました。
光線治療は、決して「最後の手段」ではありません。むしろ、早い段階で導入することで、ステロイド外用薬の使用量を減らしたり、症状の慢性化を防いだりすることができる、積極的な治療選択肢なのです。
次回は、アトピー性皮膚炎と乾癬という、光線治療が特に効果を発揮する2つの疾患について、実際の症例を交えながら詳しく解説していきます。「自分の症状にも効果があるかも」と思われた方は、ぜひお気軽にご相談ください。
あなたに最適な光線治療を、一緒に見つけていきましょう。

日本皮膚科学会皮膚科専門医 服部浩明