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光線治療(3) アトピー・乾癬・掌蹠膿疱症

光線治療

薬を減らしながら症状改善を目指す

これまでの2回で、光線治療の仕組みと、ナローバンドUVB・エキシマライトという2つの治療法についてお話ししてきました。

今回は、実際に光線治療が大きな効果を発揮する代表的な皮膚疾患、「アトピー性皮膚炎」と「尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)」、そして「掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)」について詳しく解説していきます。

「ステロイドを長く使っているけど、減らせないかな…」
「塗り薬だけでは限界を感じている」
そんな悩みを抱える患者さんにとって、光線治療がどのような希望となるのか、実際の治療効果についてお伝えします。

アトピー性皮膚炎の光線治療

アトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能の低下と、過剰な免疫反応が複雑に絡み合って起こる慢性疾患です。光線治療は、この「過剰な免疫反応」を正常化する働きがあります。

具体的には、炎症を引き起こすT細胞の活動を抑え、炎症性サイトカインという物質の産生を減らします。さらに重要なのが、「かゆみへの直接作用」です。

アトピー性皮膚炎の患者さんの多くが、「夜中にかゆくて眠れない」「無意識に掻いてしまって傷だらけになる」という悩みを抱えています。光線治療は、皮膚のかゆみを伝える神経に直接作用し、照射後数時間でかゆみが軽減することがあるのです。

そのため、光線治療は従来の外用薬や内服薬だけでは十分な効果が得られなかった方にも、新たな治療の選択肢として注目されています。特に、症状が慢性的に続いている場合や、塗り薬の副作用に悩んでいる方にとって、日常生活の質(QOL)を向上させる一助となる可能性があります。

実際の治療効果

日本皮膚科学会のガイドラインでは、アトピー性皮膚炎に対する光線治療は、外用薬で治しにくかった皮膚症状の軽減ができる場合があり、塗り薬の副作用対策として光線療法を用いることで塗り薬の使用量を減らすことが可能とされています。

当院では、ステロイド外用剤を多量に使わなければコントロールできない患者さんには積極的に光線治療を併用しています。効果には個人差がありますが特にかゆみを減らすのに効果的です。痒みが減ればひっかくのが減る。ひっかくのが減るから悪くならない。するとステロイド外用剤も減るといういい循環が生まれるのです。

ステロイド外用薬を減らせる可能性

アトピー性皮膚炎の治療で最も患者さんが気にされるのが、「ステロイドをいつまで使い続けるのか」という問題です。

光線治療の大きなメリットの一つが、ステロイドの塗り薬の使用量を減らすことが可能という点です。光線治療を併用することで、ステロイド外用薬の強さを下げたり、使用頻度を減らしたりすることができます。

例えば、これまで強いステロイドを毎日塗っていた方が、光線治療を併用することで、週2〜3回の使用で済むようになったり、より弱いステロイドに変更できたりすることがあります。

光線治療は「ステロイドをやめる」のではなく、「ステロイドとうまく付き合う」ための強力なサポート役となるのです。

尋常性乾癬の光線治療

乾癬ってどんな病気?

尋常性乾癬は、全身にかさぶたの厚くはった赤い斑ができる病気です。皮膚の細胞が通常の10倍以上の速さで増殖してしまい、銀白色の鱗屑(りんせつ)と呼ばれる粉のようなものがポロポロと落ちるのが特徴です。

感染する病気ではありませんが、見た目の問題から精神的な苦痛を感じる患者さんが多く、QOL(生活の質)に大きく影響する疾患です。

光線治療が乾癬に特に効果的な理由

乾癬は、光線治療が最も効果を発揮する疾患の一つです。

乾癬は夏の紫外線が強い時期になると症状が軽快し、冬になると悪化する傾向があるということが古くから知られていました。光線治療は、この自然の力を医学的にコントロールして治療に応用したものです。

太陽光線に含まれる有害な紫外線をカットして必要な波長だけを照射し、過剰な免疫反応を抑えることで、異常に速い皮膚の増殖を正常化させます。

全身型光線治療が効果的

広範囲の病変を持つ患者さんにとって塗り薬を広範囲に塗るのは大変です。

かといって、乾癬の飲み薬は副作用があったり高額な薬が多く、飲み薬にも抵抗がある患者さんが多いです。

そういう場合に全身型のナローバンドUVBは特に有効な治療法です。

週1回程度の治療を継続することで、多くの患者さんで以下のような改善が期待できます:

  • 紅斑(赤み)の軽減
  • 鱗屑の減少
  • かゆみの改善
  • 外用薬の使用量削減

広範囲に皮膚症状がある乾癬の患者さんには特に全身型光線治療をおすすめしています。

掌蹠膿疱症の光線治療

掌蹠膿疱症は、手のひら、足の裏に黄色い膿をもったぶつぶつや皮むけを繰り返す病気です。

膿疱は無菌性で、他人にうつることはありませんが、痛みやかゆみを伴い、日常生活に大きな支障をきたします。

手のひらや足の裏は皮膚が厚く、塗り薬が浸透しにくいため、外用薬だけでは改善が難しいことが多い疾患です。

なぜ光線治療が効くのか

掌蹠膿疱症も免疫の異常が関係していると考えられており、光線治療による免疫調整作用が効果を発揮します。

病変が手のひら・足裏など限局している方が多いので、局所型エキシマライトの高出力照射が最も適しています。

治療のポイント

手のひらや足の裏は他の部位より皮膚が厚いため、通常より強い照射量が必要です。そのため、高出力のエキシマライトが特に有効です。

光線治療の保険適応疾患

アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、尋常性白斑、掌蹠膿疱症、類乾癬、円形脱毛症などで保険適応になっています。2020年4月より円形脱毛症にも保険が適用されるようになりました。

実際の治療費

3割負担の方で1回約1,000円という費用設定は、継続的な治療が必要な慢性疾患にとって大きなメリットです。

他の治療法との併用で相乗効果

光線治療は単独でも効果的ですが、他の治療法と組み合わせることで、さらに高い効果が期待できます。

外用薬との併用メリット

  • 治療効果が早く現れる
  • ステロイド外用薬の使用量を減らせる
  • 難治部位の改善が期待できる

内服薬との併用メリット

より少ない内服薬でも良好なコントロールを維持しやすくなります。

当院での治療アプローチ

初診時の評価

まず皮膚科専門医が詳しく診察し、以下を確認します:

  • 疾患の種類と重症度
  • これまでの治療歴
  • 光線治療の適応かどうか
  • 全身型かエキシマライトか、どちらが適切か

オーダーメイドの治療計画

患者さん一人ひとりに合わせた治療計画を立てます:

  • アトピー性皮膚炎で広範囲に症状がある→全身型ナローバンドUVB
  • 乾癬で外用薬が効かない部分がある→その部分にエキシマライト追加
  • 掌蹠膿疱症で手のみ症状→エキシマライトで集中治療

定期的な効果判定

毎回皮膚の状態を医師がチェックして効果を評価し、必要に応じて:

  • 照射量の調整
  • 照射頻度の変更
  • 他の治療法の追加検討

まとめ:薬を減らしながら、より良い肌へ

アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、掌蹠膿疱症。これらの慢性皮膚疾患は、患者さんにとって長い付き合いとなる病気です。

「一生薬を塗り続けるのか…」
「副作用が心配…」
「もっと効果的な治療はないのか…」

そんな悩みを抱える患者さんにとって、光線治療は有益な選択肢です。

  • ステロイド外用薬の使用量を減らせる
  • 内服薬が使えない方でも治療可能
  • 保険適用で経済的負担が少ない
  • 副作用が少なく安全性が高い

何より、「薬に頼りすぎない治療」という選択肢があることが、患者さんの心理的な負担を軽減します。

光線治療は決して万能ではありません。効果が出るまでには時間がかかりますし、定期的な通院も必要です。

でも、正しく続ければ、多くの患者さんが「やって良かった」と実感される治療法です。

次回は、白斑と円形脱毛症という、色素と毛髪に関わる疾患への光線治療について詳しく解説します。

「白い斑点を元の肌色に」「抜けた髪を再び生やす」、そんな再生医療的な側面を持つ光線治療の可能性についてお話しします。

日本皮膚科学会皮膚科専門医 服部浩明