
皮膚科専門医として毎日のように様々な年代の患者さんを診察していますが、最近目立ってきた傾向があります。
それは男性からのシミや肌荒れの相談が増えてきたことです。
今までは10代〜20代を中心にニキビやニキビ跡の相談を受けることは多かったのですが、最近は30代から90代までの壮年〜高齢の方からシミや肌荒れの相談を受けるようになってきました。
しかしシミや肌荒れは長年の蓄積で徐々にできてくるものなので、日ごろから正しいスキンケアをしておかなければ取り返せなくなってしまうこともあります。
一般的に女性に比べて男性は日ごろのスキンケアにあまり気を使わないので、どうしても皮膚の老化が進みやすいのが現状です。
しかし、それは逆に「基本のスキンケアをするだけでかなり改善できる余地がある」ということですね。
そこで、何回かに分けて男性のためにベーシックなスキンケアについてお話していきます。名づけて「メンズのスキンケア」シリーズです。
第一回目の今回は男性が知っておくべき「正しい洗顔」について、医学的根拠を交えながら詳しく解説していきます。
1. なぜ「洗顔」が肌の命運を分けるのか?
男性の肌が抱える「宿命」を理解しよう
- 皮脂分泌量は女性の約2〜3倍 — 男性は加齢しても皮脂量があまり減りません。
- 水分量は女性の30〜50% — 皮脂が多い割に水分量は乏しく蒸発しやすい。
- 「皮脂は多いのに実は乾燥している」— 脂っぽいのに乾いているダブルパンチ。
肌の汚れの正体とその影響
- 皮脂と汗:時間が経つと酸化し、毛穴詰まりやニキビ、テカリ、くすみの原因に。
- 古い角質:残留するとごわつきや毛穴詰まりを招く。
- 外部からの汚れ:ほこり・花粉・排気ガスなどが付着。
- シェービング後の微細な汚れ:シェービング剤の残りや炎症物質など。
「水だけ洗顔」ダメゼッタイ
人工皮脂を使った実験では、水洗いだけでは皮脂がほとんど落ちませんでした。
一方で、洗顔料を使うと半分以上の皮脂を落とせます。皮脂は油性なので水に溶けにくいため、「水だけ洗顔」は幻想と言えます。
さらに問題なのは「落ちない皮脂をこすってしまう」問題です。こすればこするほど皮膚はいたむし、こすっても皮脂は落ちない…。
水だけ洗顔はダメ、ゼッタイなのです。
2. 現実的な洗顔のススメ
雑誌などに書いてある「理想的な洗顔」はやたら細かく書いてあります。
できる方はやっていただけばよいのですが、現実的に続けにくいもの。スキンケア習慣は続けてこそ意味があるのです。
ここでは必要最低限で最大効果を得る2分洗顔を提案します。
2分で完了! 必要最低限の洗顔3ステップ
- STEP1:洗浄剤で洗顔・すすぎ(1分)
- STEP2:タオルでこすらずに水分を吸い取る(30秒)
- STEP3:直後に保湿を必ず行う(30秒)
洗顔料選びは「シンプル」が正解
- イチ押し:ポンプで泡が出てくる製品 — 泡立て不要で摩擦を軽減。
- 成分はシンプルが一番 — 余計な美容成分よりも低刺激を優先。
- 固形石鹸・ジェルでもOKだが、継続しやすさはポンプ式に軍配。
3. 絶対に守るべき「最低限」のルール
- ルール1:皮脂を落とすことと水分補給は必ずセットで
保湿を怠ると皮脂の過剰分泌が促進され、悪循環になります。洗顔後は即座に保湿を! - ルール2:朝夕の洗浄剤での洗顔は必須
夜間にも皮脂は分泌されます。朝も夜も必ず洗浄剤で洗顔しましょう。 - ルール3:皮脂が多い人は昼の洗顔セットを職場に
午後のテカリが気になるなら、職場にミニ洗顔セットを置いて昼休みにサッと洗顔するだけで大違いです。 - ルール4:摩擦は百害あって一利なし
ゴシゴシ洗いやタオルでの強い擦りはメラニン色素を増やし黒ずみの原因に。優しく洗い、そっと押さえて水気を吸い取るだけでOK。
4. よくある疑問:時短洗顔Q&A
- Q1. 1分の洗顔で本当に汚れが落ちる?
- 界面活性剤が皮脂を浮き上がらせるのに十分な時間は数十秒。むしろ長時間の洗顔は必要な皮脂まで奪うので逆効果。
- Q2. 泡立てなくても大丈夫?
- ポンプ式の泡ならそれで十分。手間なく最初から理想的な泡が得られます。
- Q3. すすぎも時短したい
- すすぎ残しは刺激となり肌荒れの原因に。すすぎだけは丁寧に! とくにフェイスラインと生え際を意識。
- Q4. 保湿も面倒なんですが…
- 化粧水・乳液・美容液が一体になったオールインワンアイテムで1ステップ保湿が最適。次回の保湿編を参考にしてください。
まとめ:「最低限」を続けることが最強
- 完璧を目指して三日坊主になるより、必要最低限を毎日継続するほうが効果的。
- 朝の貴重な時間を奪わない
- 複雑な手順を覚える必要がない
- それでも肌にとって本当に必要なケアはカバーできる
ぜひ今日から始めてください。1週間も続ければ、肌の変化を実感できるはずです。
次回は、この時短洗顔の後に行う「保湿」について、これまた最低限で最大効果を得る方法を解説していきます。
岡山市北区の皮膚科・美容皮膚科 服部皮膚科アレルギー科
(院長 日本皮膚科学会皮膚科専門医 服部浩明)