
ここまで花粉による皮膚症状について一般的な基礎知識と注意点についてお話してきました。
次に、病院で行う治療についてお話していきます。花粉の皮膚炎の治療は、目や鼻の花粉症がある場合にはそれも同時に行うのが早くよくなるコツです。当院ではアレルギー科として、目・鼻・皮膚のすべてをまとめて治療しています。
抗ヒスタミン剤(内服薬)
保険適用される抗ヒスタミン薬は主に第一世代と第二世代に分類されます。第一世代(クロルフェニラミンなど)は即効性がありますが、眠気や口渇などの副作用が出やすい特徴があります。車の運転などには十分注意しましょう。これらは市販品の総合感冒薬やアレルギーのお薬にも使用されています。
第二世代(フェキソフェナジン、セチリジン、ロラタジンなど)は眠気の副作用が比較的少ないタイプで、病院の治療薬としては主流です。
エピナスチン・ロラタジン・セチリジンなどは1日1回の服用で効果が持続するため、日常生活への影響が少ないのが特徴です。第一世代ほどではないけれど眠気が出やすいので、注意が必要です。一日1回タイプでは眠る前に飲むのがよいでしょう。
現在は第二世代の抗ヒスタミン薬でも市販されているものがあります。たとえば、「アレグラFX」(フェキソフェナジン)、「アレジオン20」(エピナスチン)、「アレルビ」(エバスチン)などです。
病院を受診する時間がなければ薬局などで購入できますが、購入の際は薬剤師さんとしっかり相談しましょう。
ステロイドの塗り薬
ステロイド外用薬は炎症を素早く抑える効果があり、症状の重症度に応じて5段階の強さ(ストロンゲスト、ベリーストロング、ストロング、ミディアム、ウィーク)から選択されます。顔や首などの皮膚の薄い部位にはミディアムやウィーククラスが、体幹部にはストロングクラス以上が処方されることが一般的ですが、顔や首でも、皮膚の症状が強ければやや強めの薬を短期的に使うことがあります。
フルコートなどの市販品ステロイド外用剤は顔首に使うには強すぎることが多いので要注意です。また目の近くでは、目の中に入っても良いように作られた眼軟膏を使用することがあります。
前回のブログでもお伝えした通り、皮膚の状態が悪いままスキンケアでなんとかしようとすると、こじらせてしまうことが多いので、化粧水がしみ始めたら無理をせずに皮膚科を受診するようにしましょう。
ステロイド以外の塗り薬
例えばアトピー性皮膚炎がある方では、花粉皮膚炎がひどくなりやすいことが知られています。もともとのバリア機能が弱いためです。良くなったり悪くなったりを繰り返す場合には、タクロリムス軟膏・デルゴシチニブ軟膏などを併用する場合があります(アトピー性皮膚炎についてはコチラを御覧ください)。
また、最近ではアレジオン眼瞼クリームという新しい薬が出ています。まぶたに塗る薬で、目の中のかゆみにもまぶたにも効果的です。特に目薬が使いづらいお子さんには使いやすい薬です。
ただし、これらのステロイドではない薬は、炎症が激しい時に塗ると逆に感染症のリスクが高まったり刺激になるので、きちんとステロイドの塗り薬で炎症を抑えてから使用する必要があります。
ステロイドの薬は塗りすぎても塗らなさすぎてもうまく使えないので、早めに皮膚科を受診するようにしてくださいね。
舌下免疫療法について
六歳以上では、舌下免疫療法を行うことができます。
舌下免疫療法とは、スギ花粉エキスを含む錠剤(シダキュア)を舌下に投与し、徐々に体を慣らしていく根本的治療法です。効果発現には1〜2シーズンかかると考えられていましたが、最近では数ヶ月でも効果があるというデータもあります。
少なくとも2年以上継続が必要なので、根気がいる治療法ですが、毎年ひどい花粉症に悩んでいる方は検討してもよいでしょう。
ただし、アレルギーの抗体価が低い方ではせっかく何年も頑張っても効果の実感が得られない場合もあるので、当院ではまずアレルギー検査(子供でも指先からできます)をしてから、抗体価が高い方におすすめするようにしています。
保険適用されていますが、初回は医療機関での30分程度の経過観察が必要で、その後も定期的な受診が必要です。
副作用として口腔内の掻痒感や腫れ、まれに全身症状が出ることもあるため、医師の指導のもとで進める必要があります。
治療は花粉シーズン前から開始するのが理想的で、通年継続することが推奨されます。岡山市なら、ヒノキの花粉が飛び終わった6月くらいからが良いと思います。
最後に
花粉皮膚炎は原因を完全に除去することができないので、薬でコントロールすることがどうしても必要です。特に目の周りを引っ掻いたり叩いたりを繰り返していると目の合併症(網膜剥離や若年性白内障)などのリスクが高まります。
また、花粉の皮膚炎をきっかけにしてバリア機能が弱くなると、ニキビやアトピー性皮膚炎などのもともとの皮膚症状が悪くなりやすいというデメリットもあります。
ポイントは「化粧水がしみるかどうか」です。このポイントを知っているだけで早めの対処が必要なので、毎日のスキンケアの時に気をつけてくださいね。