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シミ取りレーザーと光治療、どちらがいい?見た目だけでは決められない理由

妻が夫の頬のシミを指さす

くっきりしたシミならレーザー、頬全体に散らばっているなら光治療。治療法を調べていると、そんなふうに自分で当たりをつけたくなります。

たしかに、境界のはっきりしたシミにはQスイッチルビーレーザーが、頬全体に広がる細かなシミや色ムラには光治療が向くことがあります。ただ、シミ治療は見た目だけで治療法を決められるほど単純ではありません。

特に注意したいのが肝斑です。一見すると普通のシミに見えても、肝斑が重なっていると、レーザーや光治療の刺激でかえって濃くなることがあります。

大切なのは、レーザーと光治療のどちらが優れているかではありません。まず、ご自身のシミが何なのかを見極めることです。今回は、当院にあるQスイッチルビーレーザーと光治療器(ノーリス)を、診察室でどう使い分けているのかをお話しします。

レーザーと光治療、違いは「点で取るか、面で整えるか」

一点を取るか、面で薄くするか

衣類の汚れにたとえると分かりやすいかもしれません。はっきりした一点の汚れには、シミ抜き剤をそこだけに使います。全体がなんとなくくすんでいるなら、洗濯を何度か重ねて落としていきます。

Qスイッチルビーレーザーは、シミ抜き剤にあたります。694nmというひとつの波長の光を、ごく短い時間に集中させて当てます。この波長はシミの色素によく吸収され、周りの皮膚にはあまり吸収されません。そのため、狙ったシミの色素だけを一度に砕くことができます。砕かれた色素を含む表皮はかさぶたになり、はがれ落ちるときに色も一緒に抜けていきます。

光治療(IPL)は、洗濯にあたります。幅のある光を顔全体に面で当て、一度に届けるエネルギーはおだやかです。色素を一気に砕くのではなく、照射後、反応した部分がごま粒のような細かなかさぶたになり、少しずつ剥がれ落ちていきます。幅のある光は血管の赤みにも吸収されるので、シミと一緒に赤ら顔やくすみも整えられます。

レーザーは1回で変化しやすい。でも、強ければいいわけではありません

強く当てるほど取れる、ではない

日本皮膚科学会などがまとめた美容医療の診療指針では、老人性色素斑(年齢とともに増えるシミ)にレーザーや光治療を行うことが、強く推奨されています。なかでもQスイッチルビーレーザーは切れ味がよく、多くのシミは1回の照射で取れます。海外で91か所の老人性色素斑を治療した研究でも、高い治療効果が報告されています。

その代わり、照射した場所は1週間ほどでかさぶたになり、2週間ほどで自然に剥がれるまで、保護テープかメイクで隠していただきます。かさぶたが取れたあとに一時的に色が戻る「戻りジミ」が起こりやすいのも、このレーザーの性質です。照射後の過ごし方は、「シミ取りレーザーは、かさぶたが取れてからが本番」で詳しくお話ししています。

ここで知っておいていただきたいのは、強く当てるほどよく取れる、というわけではないことです。アジア人のシミを対象に照射の強さを比べた研究では、強く当てても取れ具合はほとんど変わらず、戻りジミだけが数倍に増えていました。濃いシミだから強い機械で一気に、という考え方は、仕上がりをかえって損ねることがあります。

反対に、とても薄いシミは、ルビーレーザーでも取りにくいことがあります。レーザーが反応する相手は色素そのものなので、色素が少なければ光を受け止めるものがありません。

薄いシミが広がる顔は、光治療で少しずつ整える

光治療は回数を重ねて少しずつ薄く

光治療は1回で終わる治療ではありません。3〜4週間おきに3〜5回ほど重ねて、少しずつ薄くしていきます。日本人の老人性色素斑やそばかすを対象にした研究でも、効果が確かめられています。

1回の刺激がおだやかなぶん、ダウンタイムは短く、戻りジミも起こりにくいとされています。照射後に赤みが出ることはありますが、多くの方は当日か翌日からメイクができ、テープを貼る必要もありません。ただし光治療も、一度に効果を求めて強く当てると、翌日に細かなかさぶたがたくさんでき、ダウンタイムが長くなります。一方で、1回あたりの変化はおだやかなので、濃いシミはそのあとも残ることがあります。

そばかすは、小さな点ひとつひとつの色が濃いので、レーザーのほうがよく反応することがあります。当院では、そばかすや小さなシミが多い方に、ルビーレーザーで15〜30個ほどをまとめて照射する方法も用意しています。どちらが向くかは、シミの数と広がり方、そして次にお話しする生活の予定を合わせて決めています。

テープを貼れない2週間があるなら、それも判断材料です

治療後の2週間で選ぶ

ルビーレーザーは治療の回数は少なくて済みますが、照射のあと2週間ほどはテープやメイクで隠す期間があります。人前に出る仕事で顔にテープを貼れない方や、屋外で過ごす予定が詰まっている方には、負担になることがあります。光治療は通う回数が増える代わりに、日常生活をほとんど変えずに続けられます。

費用の考え方も違います。当院の場合、ルビーレーザーは直径5mmまでのシミ1個で5,500円(税込)から、光治療は両頬と鼻で1回18,000円(税込)です。濃いシミが1〜2個ならレーザーのほうが安く済み、顔全体を整えたいなら光治療のほうが一度に多くの範囲を扱えます。

治療法を決める前に、肝斑を見逃してはいけません

選ぶ前にシミの正体を見分ける

ここまでの使い分けは、老人性色素斑やそばかすのように、色素が表皮の浅いところにたまったシミの話です。見た目は同じ茶色でも、どちらの機械を選ぶかより先に確かめなければならないシミがあります。濃いシミだからレーザー、とは限らないのです。

そのひとつが肝斑です。濃く見えるシミの下に、肝斑が隠れていることもあります。肝斑は、色素を作る細胞が刺激に敏感になっている状態です。強いレーザーを当てると、その刺激でかえって濃くなることが知られています。診療指針でも、肝斑の治療はまず紫外線対策と塗り薬・飲み薬で、レーザーや光治療は、それで十分な効果が得られない場合に出力を抑えて併用してもよい、という位置づけです。

診察室では、シミ取りレーザーを希望して来られた方の頬に肝斑が重なっていて、照射より先に飲み薬と塗り薬から始めることになる、ということが珍しくありません。レーザーか光治療かを決める前に、照射そのものを待つべきかどうかの判断が入るのです。

もうひとつは、表面が盛り上がったシミです。多くは脂漏性角化症という皮膚の良性のできもので、色素だけを狙う治療では厚みが残ります。こちらは炭酸ガスレーザーで削るほうが向いています。

次のような場合は、照射を重ねる前に、皮膚科専門医にご相談ください。

  • 以前にレーザーや光治療を受けて、かえって色が濃くなったことがある
  • 両頬に左右対称に広がるシミがあり、肝斑かどうか分からない
  • 皮膚科専門医以外やオンライン診療で処方された薬で症状が悪化している場合

だから、機械を選ぶ前にシミを診断します

レーザーと光治療は、どちらが強いかで比べる道具ではありません。濃いシミを一点ずつ取りきるのか、薄いシミの広がった顔全体を少しずつ整えるのか、それとも照射の前に肝斑の治療から始めるのか。その答えは、機械の側ではなく、あなたのシミの側にあります。

治療法を先に決めるのではなく、まず診断から始めることが、遠回りに見えて一番の近道です。そもそも自分のシミにレーザーを当ててよいのかが気になる方は、「そのシミ、本当にレーザーで取って大丈夫ですか」もあわせて読んでみてください。

日本皮膚科学会認定皮膚科専門医 服部浩明