肝斑と診断されたら、最初に何をするか|服部皮膚科アレルギー科|岡山市北区清心町の皮膚科・アレルギー科・美容皮膚科 肝斑と診断されたら、最初に何をするか|服部皮膚科アレルギー科|岡山市北区清心町の皮膚科・アレルギー科・美容皮膚科

Blog ブログ

肝斑と診断されたら、最初に何をするか

化粧台の前でスキンケアの選び方に迷う女性

肝斑と診断されると、早く薄くしたくて、塗り薬の追加やレーザーをすぐに考えたくなります。その気持ちは自然です。ただ、診断のあとに最初にするのは、新しい治療を足すことではありません。色を濃くしている要因、つまり日差しと毎日の肌への刺激を減らすことです。そのうえで、塗り薬や飲み薬を医師と相談して選びます。レーザーは、その後に回ります。

この順番には理由があります。肝斑は、治療でいったん薄くなっても、紫外線やこすった刺激、ホルモンの変化で戻りやすい色素異常です。日本の美容医療診療指針でも、光老化を土台に、良くなったり悪くなったりを繰り返すと説明されています。濃くする側の力が残ったまま、薄くする治療を重ねても、思うように進みません。

診察室でも、肝斑と伝えた直後に「では何を買えばいいですか」「レーザーはいつから受けられますか」と聞かれることがあります。今回は、その手前でやることをお話しします。肝斑かどうかの見分け方は、前回の記事をご覧ください。

肝斑と診断された日に、治療法より先に確認したい2つのこと

診断の日に確認することは、ほかのシミの重なりと、使っている薬や予定

診断がついた時点で確認しておくと、治療の順番や、使える薬が変わることがあります。確認したいのは次の2つです。

ひとつめは、肝斑だけなのか、ほかの色素異常が重なっていないかです。前回お話ししたとおり、肝斑には普通のシミや後天性真皮メラノサイトーシス(ADM)が重なっていることがあります。重なっている場合は、先に肝斑を落ち着かせるのが基本で、その順番で治療計画が変わります。

ふたつめは、使っている薬と、これからの予定を医師に伝えることです。妊娠の予定、ピルを含むホルモンの薬、血栓症の既往は、あとで飲み薬を選ぶときの条件になります。肝斑は妊娠やホルモンの薬をきっかけに出ることもありますが、ピルを服用している方も、自己判断で中止しないでください。続けるか変えるかは、処方した医師と相談して決めます。

日焼け止めは「夏だけ」では足りません

遮光は一年中。紫外線、可視光、窓際や曇りの日それぞれの対策

肝斑では、夏だけ日焼けを避ければよいわけではありません。一年を通した遮光が、治療の土台になります。国際的な専門家合意(皮膚科医38名、11か国による2026年の報告)でも、広い波長を防ぐ日焼け止めは欠かせないものとされています。

肝斑は、夏に濃く、冬に薄くなる経過をたどることが多い色素異常です。そのため夏だけ気をつければよいと考えがちですが、冬の日差しでも悪化の刺激は途切れません。曇りの日や、窓際で過ごす日も同じです。

紫外線だけでなく、可視光(目に見える光)も肝斑を悪化させることが知られています。このため、酸化鉄を含む色つきの日焼け止めやファンデーションが、肝斑の遮光としてよく勧められます。色の付いた粉で光を物理的にさえぎる仕組みです。加えて、帽子や日傘を組み合わせると、塗りムラや汗で落ちた分を補えます。

日焼け止めは、塗る量が少ないと、表示どおりの効果が出ません。顔全体にたっぷり、汗をかいたあとや時間が経ったあとは塗り直す。この当たり前の作業が、肝斑では治療の一部になります。

美白ケアを増やすほど、濃くなることがあります

こすったりケアを重ねたりすると、炎症で色が濃くなることがある

薄くしたいと思うと、美白化粧品やピーリングなどを追加したくなります。ただ、肝斑では、ケアを増やすことが刺激になり、かえって色を濃くしてしまうことがあります。

洗顔やクレンジングで強くこする、スクラブやブラシ洗顔を続ける、シートパックを長く貼る。こうした慢性的な刺激は、肌に軽い炎症を起こし、色素をつくる細胞を刺激して、色を濃くする方向に働きます。

とくに注意したいのが、良かれと思って重ねる美白ケアです。市販のハイドロキノンや、ピーリング、美白成分の高濃度品を自己流で足していくと、刺激で肌が炎症を起こし、炎症後色素沈着という別の色が上に重なることがあります。肝斑に美白ケアを足しているつもりが、色むらを増やしている状態です。

洗顔は泡で包むようにやさしく、保湿を丁寧に。ここは地味ですが、肝斑ではどの治療にも先立つ基本です。

遮光の次に、塗り薬と飲み薬を考えます

遮光と刺激の見直しを土台に、塗り薬、飲み薬の順に足す

遮光と刺激の見直しをしたうえで、必要に応じて塗り薬や飲み薬を組み合わせます。ただし、飲み薬は誰でも使えるわけではなく、安全の確認が先です。

塗り薬は、ハイドロキノンを中心とした外用が、国際的な専門家合意でも標準的な位置づけです。ただし、海外で標準とされる配合をそのまま日本で使えるわけではありません。日本での承認状況や皮膚の反応を踏まえて、医師が使える範囲で組み立てます。

飲み薬は、トラネキサム酸が代表です。市販薬には肝斑に使える製品があり、服用は2か月を超えず、再開するときは2か月以上あけるという注意がついています。飲めば終わりではなく、中止後に色が戻ることがあるため、遮光と外用は続けます。

トラネキサム酸は、できた血のかたまりが溶ける反応を抑える薬です。このため、血栓症の既往がある方、血栓ができやすい体質の方、エストロゲンを含むピルを使っている方では、原則として避けます。肝斑で内服した人の診療記録を用いた最近の多施設の解析では、血栓症との関連は示されていません。それでも、使う前に既往と併用薬を確認することが前提です。服用中に、片方の脚だけが腫れて痛む、胸が痛む、息苦しいといった症状が出たら、血栓の可能性があるため、直ちに医療機関を受診してください。

レーザーを急がないほうがいい理由

いきなりレーザーを当てると悪化することがあり、土台を整えてから検討する

レーザーで早く消したい、と考える方もいます。ただ、肝斑ではレーザーは最初に選ぶ治療ではありません。

日本の診療指針は、遮光や外用・内服などの保存的な治療で十分でないときに、レーザーや光治療を併用することを、弱く提案する位置づけにとどめています。国際的な合意でも、レーザーは治りにくい例に限ると整理されています。

通常の強さでシミを壊す照射を肝斑に当てると、悪化や色素沈着の原因になります。肝斑向けの弱い照射法でも、色が抜ける、再燃するといった問題が報告されており、安全に重ねられる回数の上限も定まっていません。レーザーを選ぶかどうかは、土台を整えたあとの判断です。この話題は、別の回で詳しくお伝えします。

薄くなったあとが、肝斑治療の終わりではありません

薄くなっても遮光をやめると、再び濃くなることがある

肝斑は、薄くなれば治療が終わるわけではありません。遮光や刺激の見直しをやめると、再び濃くなることがあります。ここが、肝斑が長いつきあいになる理由です。そのため経過は、数週間ではなく月単位で見ていきます。当院では、3か月を目安にきちんと治療を続けたうえで、画像診断で経過を確認し、治療の見直しをするようにしています。

診察室では、肝斑と診断される前から、美白化粧品や市販薬、サプリメント、施術を複数、同時に始めている方にお会いします。そうなると、何が効いたのか、あるいは何が刺激になったのかが、あとから見分けられなくなってしまいます。

肝斑と診断された方、または診断を受ける予定の方は、いま使っているスキンケア、化粧品、市販薬、サプリメントを、診察のときにお伝えください。化粧品の名前を書いたメモや、スマートフォンで撮った写真でも十分です。何を続けて、何をやめるかを一緒に整理するところから、治療を始められます。

日本皮膚科学会認定皮膚科専門医 服部浩明