レーザーや光治療でシミを治療するのに向いているのは、紫外線の弱い10月から2月です。9月に入った今は、その期間に治療がうまく入るよう、肌を整えておく時期にあたります。
なぜ9月から始めないのか。夏の紫外線を浴びた直後の肌は色素が多く、この状態で照射すると狙ったシミ以外にも反応してしまうからです。そして3月に入れば紫外線は再び強まります。つまりシミの治療に使える期間は、1年のうち5か月程度しかありません。
実際、9月に入ると当院でも「夏の間に、頬のシミが濃くなった気がして」「日焼けが落ち着いてからにしようと思って、ずっと先延ばしにしていました」というご相談が増えてきます。そこで「もう少し涼しくなってから」と考えているうちに、使える期間は短くなっていきます。
今回は、その5か月程度をどう使うのか、そのために9月のうちに何をしておくのかをお話しします。
目次
なぜ、夏より秋のほうがシミが気になるのか
「夏の間より、9月に入ってからのほうが目立つ気がします」と言われることがあります。気のせいではありません。理由は二つあり、それが重なっています。
ひとつは、シミそのものが夏の間に濃くなっていることです。紫外線を浴びると、表皮のいちばん下にある色素細胞が刺激され、色素をつくる働きが強まります。もともと色素斑のある場所では、この反応が周囲より強く出ます。つまり夏を越えたシミは、見え方が変わったのではなく、実際に色素の量が増えています。
もうひとつは、まわりの肌が白くなることです。日焼けによる肌全体の色は、表皮が入れ替わるにつれて数週間から数か月かけて抜けていきます。ところが色素斑の色は、そのようには抜けません。
夏の間は、濃くなったシミと日焼けした肌の両方が濃い側にあるため、差が小さく見えています。秋になるとまわりだけが白くなり、シミは濃いまま残る。濃くなったシミが、白くなった肌の上で際立つ。9月から10月にコントラストがいちばん大きくなるのは、そのためです。
なお、そばかす(雀卵斑)は冬になると薄くなることが知られていますが、老人性色素斑は季節にかかわらず残ります。「夏の間だけのもの」と考えて待っていても、自然に消えることはありません。
9月の肌に、レーザーは当てられません
レーザーは、色素そのものに吸収されて熱に変わることで働きます。ですから皮膚全体の色素が増えている状態で照射すると、狙ったシミ以外の場所でもエネルギーが吸収され、やけどや、炎症のあとに残る色素沈着につながります。
9月の肌は、まさにその状態です。日中の暑さが残っているだけでなく、夏に受けた紫外線の影響が皮膚の中に残っています。「もう秋だから」という感覚と、皮膚の実際の状態にはずれがあります。
この時期に照射を急ぐと、シミを取るつもりが色素沈着を増やすことになりかねません。9月は待つ月ではなく、整える月です。
9月のうちに、できることがあります
「照射できない」というのは、「何もできない」という意味ではありません。9月にしておくことで、10月からの治療の入りが変わります。
塗り薬と飲み薬。色素をつくる働きを抑える方向の外用薬や内服薬を、シミの種類と肌の状態に合わせて組み合わせます。照射の前に色素の量を減らしておけば、当てたときに周囲が反応しにくくなり、照射後の色素沈着も起こりにくくなります。保険で使えるものと自費のものがありますので、診察のときにご説明します。
エレクトロポレーション(ケアシス)。当院がとくにおすすめしているのがこれです。電気の力で皮膚に一時的な通り道をつくり、塗るだけでは十分に入っていかない成分を角層の奥まで届ける方法です。針を使わないため痛みはほとんどなく、照射ができない時期にも進められます。この機器と施術の内容は、ケアシスSの施術案内にまとめています。
生活習慣の見直し。遮光の徹底はもちろんですが、それだけではありません。洗顔やクレンジングで顔をこすること、タオルで強く拭くこと。こうした日々の摩擦そのものが色素沈着の原因になります。色素を減らそうとしている一方で、毎日刺激を加えていては差し引きゼロです。診察では、この点も一緒に見直していきます。
9月をこう使っておくと、10月に照射を始めたときの反応が変わります。準備をした肌と、夏のままの肌では、同じ機械を当てても結果が違います。
10月から2月を、どう使うか
紫外線が弱くなるのは10月からです。そして3月に入れば再び強まります。この5か月程度が、シミの治療に使える窓になります。
治療にかかる時間は方法によって違います。
境界がはっきりした茶色いシミにQスイッチルビーレーザーを当てる場合、多くは1回の照射で済みます。照射後は患部に黒っぽいかさぶたができ、1〜2週間ほどで自然に剥がれます。その間はテープで保護するか、コンシーラーで覆っていただきます。かさぶたが取れた後にはピンク色の新しい皮膚が現れます。この皮膚は角層がまだ薄く、紫外線をさえぎる色素も乏しいため、ここで日に当ててしまうと炎症のあとの色素沈着として色が戻ってしまいます。
一方、境界のぼんやりしたシミやくすみ、赤みを含めて肌全体を整えていく光治療は、1回では終わりません。当院では3回を1クールとし、4週間の間隔をあけて照射します。10月に始めれば、2回目が11月、3回目が12月。肌が落ち着いて仕上がりを確認できるのが1月という流れになります。
つまり、10月に入ってすぐ動き出せれば、窓の中に治療も経過観察も収まります。逆に年明けから始めると、いちばん紫外線の影響を受けやすい時期が、紫外線の強まる3月以降と重なってしまいます。
当院では、この時期に来られる方には、まず何をいつまでに終わらせたいのかをうかがってから治療法を決めています。予定を先に置くほうが、結果的に安全な組み方になるからです。
治療法ごとの特徴や費用については、別の記事で取り上げています。
紫外線対策は、治療そのものです
ひとつ、はっきりお伝えしておきたいことがあります。
紫外線対策は、治療が終わるまでの一時的な我慢ではありません。シミの治療において、紫外線を防ぐことは治療の土台であり、レーザーや光治療はその上に乗るものです。順序が逆になっている方が少なくありません。
シミは、紫外線を浴びた皮膚が色素を作り続けた結果として現れます。原因が続いている限り、機械でいくら色素を減らしても、また同じ場所に同じものができてきます。照射だけを繰り返して日焼け止めを塗らないというのは、水を止めずに床を拭き続けるようなものです。
ですから、日焼け止めと帽子は治療期間だけのものではなく、その後もずっと続けていただくことになります。曇りの日も、屋内で窓際にいる時間も含めてです。
環境省の紫外線環境保健マニュアルでは、1年間に地上に届く紫外線のおよそ70〜80%が4月から9月に集中しているとされています。裏を返せば、10月から3月にかけては紫外線が少ない期間です。ただしゼロではありません。治療の窓に入ったからといって、遮光をやめてよいわけではありません。
ただし、すべてのシミがレーザー向きではありません
もうひとつだけ、始める前に確かめておきたいことがあります。
顔にできた茶色い色の変化を、多くの方はまとめて「シミ」と呼ばれます。しかし皮膚科の目で見ると、これは適した治療がまったく違うものの寄せ集めです。とくに肝斑は、色素細胞がもともと刺激に過敏になっている状態のため、通常のレーザー照射がかえって色を濃くすることが知られています。また、シミに見えて実は前がん病変であることもあります。
当院では、施術前に必ず皮膚科専門医が診察し、何を治療するのかを決めたうえで治療法を選んでいます。皮膚科専門医以外やオンライン診療で処方された薬で症状が悪化している場合も、診断からやり直します。
見分け方については、別の記事で詳しくお話しします。
9月のうちに、一度ご相談ください
10月から2月という5か月程度は、思っているより短い期間です。そのあいだに何回照射できるかは、シミの種類によって変わります。
9月のうちに一度診察を受けて、今あるものが何なのかを確かめ、10月から動き出せる状態にしておいてください。
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医 服部浩明