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「汗拭きシートをいつも持ち歩いています」
「汗をかいたら、すぐタオルでよく拭くようにしています」
こうした工夫を続けているのに、首回りや肘の内側の赤みがなかなか引かない、むしろひどくなっているように感じる、という方が少なくありません。
汗による皮膚のトラブルを防ごうとして、実は逆効果になっているケアがあります。今回は、汗疹と汗かぶれ、それぞれにとって本当に役立つセルフケアについてお話しします。
「汗をかかないようにする」は正解か?
汗疹や汗かぶれに悩んでいると、「汗をかかなければよい」と考えてしまうのは自然なことです。しかし、汗をかくこと自体が問題なのではありません。
汗は本来、体温を調節するための大切な機能です。無理に抑えようとすると、かえってからだに負担がかかります。日本皮膚科学会のアトピー性皮膚炎の診療ガイドラインでも、「発汗そのものを避ける必要はなく、汗をかいた後の対策を重視することが重要」という立場がとられています。
大切なのは、汗をかかないことではなく、かいた汗を皮膚に長時間残さないことです。
汗疹のケア――汗管をこれ以上詰まらせないために
汗疹は汗管が詰まって起こる病変ですから、それ以上詰まらせないようにすることが基本です。
涼しい環境に移る、高温多湿を避ける、通気性のよい服にする、蒸れや密閉を減らす――こうした対処で原因が解消されると、汗疹は自然に治まっていくことが多い病気です。
汗をかいた後は、シャワーや流水で洗い流すと汗管の出口に汗の成分が残りにくくなり、詰まりの予防につながります。ただし、タオルでゴシゴシこすることは逆効果です。摩擦が皮膚を傷め、炎症をかえって広げてしまいます。洗う時も拭く時も、皮膚への摩擦はできるだけ少なくすることが大切です。
汗かぶれのケア――汗を「残さず取り除く」が最優先
汗かぶれのケアで最も重要なのは、皮膚に残った汗をできるだけ早く除去することです。
理想はシャワーや流水です。汗の成分を洗い流すとともに、角層がふやけるほど汗が残り続ける状態を防ぐことができます。ガイドラインでは、汗をかいた後のシャワー浴は症状の改善に有用とされており、小学校でシャワーを使えるようにした介入研究でも、アトピー性皮膚炎の症状改善が報告されています。
外出先でシャワーが難しい場合は、水で湿らせた柔らかいガーゼや布で、押さえるように汗を拭き取る方法が次善策になります。乾いたタオルで力を入れてこすると、ふやけた角層がさらに傷んでしまうため注意が必要です。
また、シャワーの後に保湿をすることも忘れないでください。汗かぶれは、バリア機能が弱った皮膚に汗の刺激が加わって起こります。洗い流した後に保湿でバリアを補うことで、次に汗をかいたときの皮膚への影響を少しずつ和らげることができます。洗浄剤は毎回必ず使う必要はなく、ぬるめのお湯で流すだけでも効果があります。過剰な洗浄はそれ自体がバリア機能をさらに低下させることがあるためです。
当院でも、汗かぶれで受診された方に「汗をかいたらなるべく早くシャワーを」とお伝えすると、「そんなに頻繁に洗っていいのですか?」と驚かれることがあります。洗いすぎのイメージを持たれている方も多いのですが、汗かぶれに関しては、温度と洗い方に気をつければ、汗のたびに流水で除去することは理にかなったケアです。
肌着の素材が「汗を残さない」ための助けになる
シャワーを浴びるほどでない汗でも、皮膚に残り続ければ刺激になります。そこで、肌着の素材選びも汗かぶれ対策として実用的な意味を持ちます。
吸湿性・速乾性に優れた素材の肌着は、皮膚表面に出た汗をすばやく吸い上げて生地の外側に拡散させます。汗が皮膚に触れている時間を短くすることで、角層がふやけにくくなり、汗の成分による刺激も受けにくくなるのです。
ただし、ここで注意していただきたいことがあります。キャミソールタイプの女性の肌着や、男性のランニングタイプのアンダーウェアは、肩や背中、わきの下など、肌着が当たっていない部分が広く残ります。生地が触れていない場所の汗は、直接皮膚の表面に留まり続けます。汗かぶれが首から肩、背中にかけて出やすい方は、こうした「肌着の空白地帯」に汗が残りやすいことが一因になっていることがあります。
半袖のTシャツ型や、脇と肩をしっかりカバーするタイプの肌着に変えるだけで、汗が皮膚に残る面積を減らすことができます。素材は吸湿速乾性のあるものを選び、汗をかいたら濡れたままにせず早めに着替えることも大切です。
「タオルでよく拭く」が逆効果になることがある
よかれと思ってやっているケアが、実はバリアをさらに傷めているケースがあります。
汗をかくたびに乾いたタオルで力を入れて拭くと、水分を取り除けても摩擦のダメージが重なります。ふやけた角層は特に摩擦に弱く、繰り返すことで炎症が広がりやすくなります。「汗をかくと必ず赤くなる、かゆくなる」という方の中には、拭き方を変えるだけで症状が落ち着くケースもあります。
こすらない、残さない、補う。汗かぶれのセルフケアはこの三つが軸になります。
しかし、セルフケアだけでは改善しない場合があります。とくに、市販薬を使っているのに良くならない、あるいは悪化している場合は、その薬が状態に合っていない可能性を考える必要があります。
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医
服部浩明