ニキビは治ったのに、赤みだけがいつまでも消えない。当院の診察室でも、こうしたご相談は珍しくなく、膿んだニキビのあとに、赤みが半年ほど続く方が多くいらっしゃいます。これは診察室での実感であり、すべての方に当てはまる数字ではありません。
赤みの残りやすさには、ニキビの炎症が、どれだけ強く、深く、長く続いたかが大きく関わります。そのため、赤みは「できてから消す方法を探す」だけでなく、赤くなる前の段階から治療を考えることで、減らせる可能性があります。
今回は、ニキビ跡の赤みの正体と、どの段階から治療を考えるのがよいのかをお話しします。ニキビができる仕組み全体は、にきび(1)基礎知識編をご覧ください。
目次
治ったはずのニキビが、なぜ赤いままなのか
「赤みは、皮膚が傷んで残った跡で、あとは待つしかない」と考える方が多いのですが、赤みの中身を知ると、できることが見えてきます。
ニキビの炎症が起きると、皮膚の浅い層にある細い血管が広がり、血管の数も増えます。炎症が引いたあとも、広がった血管がすぐには元に戻らず、血液の色が皮膚を通して赤く透けて見えます。これが、ニキビ跡の赤みです。日本皮膚科学会のガイドラインでも、炎症が消えたあとに一時的に残る紅斑と定義されています。「一時的」とあるとおり、多くは時間とともに薄くなります。
同じニキビ跡でも、茶色く残るものは仕組みが違います。こちらは、炎症の刺激でメラニン色素が増えたもので、血管の話ではありません。見分けるには、指やガラスの板で軽く押してみてください。赤みは押すと一時的に白く抜け、茶色は押しても変わりません。赤みと茶色では、有効な対処も異なります。色素沈着を対象にした美白ケアだけでは、血管に由来する赤みの改善は期待しにくいのです。
ただし、赤みが数か月たっても引かず、頬や鼻まわり全体が火照るように赤い場合は、ニキビ跡ではなく、酒さ(しゅさ)のように別の病気が隠れていることもあります。見分けがつかないときは、皮膚科で確認してください。
白ニキビから膿んだニキビまで、皮膚の中では何が起きているのか
ニキビは、進行の段階によって、炎症の深さと広がりが違います。
毛穴が詰まっただけの白ニキビ、黒ニキビ(面皰)の段階では、赤みはほとんどありません。そこから炎症が起こると、赤く盛り上がった丘疹になり、さらに膿をもつと膿疱になります。炎症が毛穴の周りの深い層まで及ぶと、硬く痛い結節や、膿の袋ができます。
炎症の範囲が広く、深く、長いほど、傷む血管も増えます。そのぶん、赤みが引くまでの時間も長くなる傾向があります。もちろん個人差はあり、膿む前に治療したからといって、赤みが必ずゼロになるわけではありません。一方で、深い炎症は赤みにとどまらず、皮膚のへこみ(瘢痕)として残ることがあります。へこみは、赤みと違って自然に元に戻りにくいため、より避けたい結果です。
軽いニキビでも、跡が残ることがあります
ニキビが軽いうちは、跡の心配は要らないと考える方もいらっしゃいます。ところが、跡の残りやすさは、そのときの重さだけでは決まりません。
米国の皮膚科医が約2,000人のニキビ患者さんを調べた研究(Tanら、2017年)では、約4割にへこみなどの瘢痕があり、そのうち約7割は、受診した時点では軽症か中等症でした。跡の残りやすさに関わる要因として、治療を始めるまでの遅れも挙げられています。この研究が調べているのは、主に皮膚のへこみなどの瘢痕であり、赤みが何か月残るかを調べたものではありません。それでも、軽いニキビでも跡が残ることがあり、治療開始の遅れが関係するという点は、早めの治療を考えるうえで参考になります。
日本皮膚科学会のガイドラインも、軽症のニキビでも瘢痕を残しうること、そして早期の治療で瘢痕を予防できる可能性を示すデータがあることを、序文で述べています。赤みだけを取り上げて、早期治療の効果を直接比べた研究は多くありません。瘢痕の予防については、早期治療を支持する知見があります。
ニキビは、多くの人が経験する身近な病気です。そのため、「自然に治るだろう」と考えて、皮膚科を受診しない方も少なくありません。ただ、軽いニキビでも跡が残ることがあります。重くなってからではなく、早めに治療を考える意味は、ここにあります。
赤みを残しにくくするために、いつ治療を始めるのか
答えは、赤いニキビになる前の、白ニキビ、黒ニキビの段階から、です。
この段階では、まだ目立った赤みや腫れはありません。毛穴の詰まりに働く塗り薬を使うことで、赤く腫れたニキビへ進むのを防ぐ治療ができます。ガイドラインでも、面皰に対する塗り薬の治療は、最も高い推奨度(A)で強く推奨されています。洗顔だけで詰まりを取るのは難しく、この段階こそ、皮膚科の治療が力を発揮します。
では、白ニキビや黒ニキビの段階で、実際にどんな治療をするのでしょうか。塗り薬には、使い始めに乾燥や刺激が出ることがあり、使い方にコツがあります。次回は、皮膚科で使う塗り薬の効果と使い方について、詳しくお話しします。
保護者の方、大学生の方へ。今からでも、治療する意味はあります
保護者の方へ。「思春期だから」「そのうち治るから」と見守っている間に、お子さんの炎症が進んでいることがあります。お子さんは、ニキビを気にしていても、病院に行くほどなのかを自分では判断できません。白ニキビ、黒ニキビが目立ってきた時点が、受診を勧めるタイミングです。
大学生や社会人で、一人暮らしを始めて自己流のケアをしている方も、同じです。通販の高刺激な洗顔料や、潰す習慣は、炎症を進める側に働きます。
そして、すでに赤いニキビができている方、赤みが残ってしまった方も、手遅れではありません。炎症を止める治療にも、残った赤みへの対処にも、今から取れる方法があります。
白ニキビ、黒ニキビが増えてきたら、膿むまで待たずに皮膚科へ
ニキビは、赤く腫れてからでないと治療できないわけではありません。額や頬に白ニキビ、黒ニキビが増えてきたら、膿むまで待たずに、一度皮膚科でご相談ください。炎症が進む前から治療することは、ニキビ跡をできるだけ残さないための大切な取り組みです。
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医 服部浩明